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2018年11月17日

事例検討会のご案内とMac版の最新情報など

Discovery Summit Japan 2118に参加された皆様,お疲れ様でした.わたしも前日の朝から高橋先生による「紙ヘリコプターを用いた実践型計画法入門」のお手伝いをしたりして,何かと動き回っていたので今になってどっと疲れが出ております.というわけで本日は短めに.
上述の高橋先生のセミナーは丸1日のセミナーなので,遠方からSummitに参加するために前泊される方も多いとのことで,Summitの前日に開催するという企画で昨年から始まりました.来年も開催すると思いますので,「実験計画って何の役に立つの?」と疑問に思われる方は是非受講してみてください.32,400円(税込)の有償セミナーでしたが,Summitの参加者には特別価格21,600円(税込)が適用されましたので,おそらく次回も同様な割引があると思います.講師の高橋武則先生(現在は慶應義塾大学)は今年もパワー全開のご発表をしていただきました.まだ今年のご発表については資料がアップされていませんが,昨年のご発表の資料がこちらにあります.このセミナーではブログでも度々言及しているHOPEアドインを使いますので,実験計画だけでなくHOPEアドインの基本的な使い方も学ぶことができます.受講後半年間という有効期限付きではありますが,個人で使うことができるHOPEアドインが入手できます.
セミナーの場で,HOPEアドインを継続して使いたいというご質問をいただくのですが,最も簡単なのは,隔月開催(今年は偶数月)のHOPE事例検討会という実験計画をもとにした事例相談会に参加していただくことです.参加費は無料ですが,自らの事例を持ち込みことが参加条件になっています.企業の技術者にとってはデータの社外開示はハードルが高いかもしれませんが,変数名や水準,更にはデータそのものを変えてしまっても全く問題ありません.必要最低限の技術背景の説明はしていただいた方がより適切な助言はできると思いますが,それさえも差し支えあれば伏せるか別のモチーフに変えるなどの工夫をしていただければ,ハードルを下げることができるはずです.上述のセミナーを受講しなくとも,検討会に参加することは可能です.わたしも検討会のオブザーバーとして出席していますので,ご興味あれば実施予定日等の検討会についての詳細をブログのコメントでお問い合わせください.
本日はここまでと思いましたが,短すぎるのでSummitで入手したMac版についての最新情報を一つ.わたしは以前よりJMPがMacBook ProのTouch Barに対応していれば便利だと考えています.ご存じない方のために補足しますと,Touch BarはMacBook Proの一部のモデルに搭載されているファンクションキーに代わる60×2170という細長い形状のディスプレイです.面積としては小さいですが,高精細なRetinaなので写真も表示できソフトによっては非常に有効です.個人的にはここにJMPのツールメニューがあれば便利だなと思っているのです.とはいえ,このTouch BarはMac本体とは別のOS(Apple WatchのOSのようです)で動作するので,ソフトメーカー側で作りこまなければなりません.Summitには毎回JMPのセールスとマーケティングのボスのJon Weiszさんが来ていて,彼はMacユーザーでもありますからこの機会に直訴してみました.そうしたら「私も欲しい」とのこと,プロダクトマネージャーのDaniel Valenteさんもその場にいたのですが,彼もまたMacユーザーで同意見でした.(今回の二人の掛け合いの講演は面白かったですね.)聞くところによると御大John Sallさんも最近Touch Bar付きのMacBookを買ったということで,おそらく彼がToch Bar対応を命じるのではないかともいっていました.
とはいえ,実現はしばらく先になる見込みです.なぜかというと最新のMac OSであるMojaveに搭載された「ダークモード」という暗い色調の表示スタイルが,JMPで問題となることが判明したからです.(そう聞いたのですが,自分もMajaveにしてJMP13を起動して見ましたが,特に問題は見あたらないですね.何か特別な操作や環境下での問題かもしれません.11/18追記:もしかしたらダークモードに対応したJMPの開発中に問題が見つかったということだったのかもしれません.以前からエディター系のソフトでダークモードをサポートしたものはありましたが,JMPの場合はグラフやデータの表示が見にくくなってしまうので,あまり現実的ではないような気もします.)ダークモードにしなければ問題ないので,普通のソフトメーカーであれば対応は後回しにされるところですが,John Sallさんが「fix it!」と命じたそうで,そうなるとそれがJMP開発の最優先になるのです.というわけで,今現在SASの開発陣がその対処に追われているとのことです.おそらくダークモードは12月リリースの14.2で対応されると予測します.ですので,Touch Bar対応は作業量の多さもあるので,遅ければJMP15になってしまうかもしれませんが,対応はしたい,とSAS USのトップが入っているので,Mac使いのJMPerの我々は心待ちにしていましょう.
Summitについてのいろいろについてはまた来週ということで本日はここまで.それではまた.
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2018年11月10日

ロバスト設計とMCDAアドイン

前々回の記事で,プロファイルの「誤差因子」に何らかの因子を割り当てると,等高線プロファイルに尾根線が描画されるというtipsを紹介しました.こうすることで,割り当てた因子の微分係数が特性に加わり,それにゼロ望目の制約を加えることで,その因子をノイズ因子としたロバスト設計が可能となります.本書にダウンロード添付したMCDAアドインはロバスト(パラメータ)設計のためのアドインですが,プロファイルでロバスト設計ができるのに,なぜ,このようなアドインが必要なのかという質問をいただきましたので,今週はそれにお答えします.
短い答えを言うならば,何をしてロバスト最適とするのかという定義が違うというのが一つの理由です.少し丁寧に説明すると,プロファイルにおいて,満足度の最大化で得られるのは誤差因子に対する応答関数の微分係数を0にする解です.例えば,次のような応答関数を考えてみると状況が良くわかります.因みにこの応答関数はサポートファイルの「ロバストデモ.jmp」から作ったものなので皆様もお試しください.ご覧のようにこの応答関数は二山あって,∂X=0の制約を課して満足度を最大化したのが次の図です.
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∂X=0の点は3つあるわけですが,ここでは特性値に最大化の制約をかけているので,左側の山の頂点が解として導出されます.因みに,最大化の制約を外しても,その上でトリップの数などの「最大化のオプション」を増やしても(デフォルトでは20ですが,例えばそれを100とする)安定して左側の山が解となります.JMPの満足度最大化の癖のようなものでしょう.他のオプションを変更して試行錯誤すれば,左側の山の頂点以外が出てくるかもしれません.もちろん,特性を最小化にすれば真ん中の谷がこのように検出されます.
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しかしながら,一般的な工業分野でより重要なのは右側の山の頂点(付近)です.特性値の変動という点では右側の頂点にある方がより大きなXの変化を受け止めやすいからです.この解は,微分係数に制約をかけることだけでは得られません.このためには,ロバスト化の指標を(特性の変動の)範囲(Range)においた最適化が有効です.但し,この場合でも状況によっては右側の山の頂点は出てきません.
下に示した解は,Xの変動を5%とした場合に導出したロバスト解の例です.(このような単純な例ではMCDAアドインは適用が難しいので,この例ではHOPEアドインを用いています.)ここに示したように,特性の制約次第で色々なロバスト解を暴くことができます.
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この暴くというフィーリングが特に工業分野での最適化では大事です.最適解は1つではなく,それは周囲の状況(社会情勢,時代)やステークホルダーにより刻一刻と変わって行くからです.ですから最適解そのものよりもシステムが内包している最適解の可能性を暴くことにより深い「意味」があるのです.その「意味」をシステムのオブジェクトと捉えれば最適解の候補がインスタンスということになります.
何よりも多目的最適化においては可能な限りロバスト化の制約は緩めておいたほうが都合が良いのです.ユーザーはロバストだからという理由で製品を購入はしないからです.一般的に,微分係数を0とするのはかなり強い制約です.この制約に引き摺られて特性の真の最適解を見逃す危険があります.ロバスト化の制約を緩くして,ばらつきは所望の範囲に入ればOKというケースがより好ましい場合がほとんどです.もちろん,微分係数に範囲の制約をかけることでも構いませんが,想像するのも困難なので通常は数値指定はできません.
このような範囲によるロバスト化を実現するのが本書に付属したMCDAアドインやHOPEアドインなのです.両者の違いについては以前お話ししたかもしれませんが,重要なことなので回を改めて説明したいと思います.因みに,来週のDiscovery Summit Japan 2018に参加される方は,そこでMCDAアドインの応用例の発表がありますので,ぜひお聞きになってください.
それではまた.
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2018年11月03日

紅茶の話

11月1日は紅茶の日だったそうです.ポッキーの日(正式にはポッキー・プリッツの日)がその形状から決められたように,紅茶の葉を数字の1に見立てて11月1日と決めたのだろうと思っていたのですが,日本紅茶協会によると,初めて外国での正式の茶会で紅茶を飲んだ日本人と言われる大黒屋光太夫が,女帝エカテリーナ2世に接見したのが1791年の11月と記録されているからだそうです.別の記録によれば1791年6月とも書かれていますが,とにかく由来はこのような歴史に基づいているそうです.大黒屋光太夫といえば,司馬遼太郎『菜の花の沖』にも登場したので,高田屋嘉兵衛とイメージがダブりますが.緑茶に慣れていたであろう光太夫の舌には紅茶はどのように感じられたのか興味があります.ロシア流の紅茶は甘いジャムを舐めながら(おそらく口に含んで溶かしながら)飲むそうなので,おそらく不味いと感じたと推察します.
紅茶の日ということで,日本紅茶協会が配布したポスターがtwittetで話題になっていました.「紅茶はインフルエンザウイルスを99.9%無力化します!!!」とのことで,みなさん99.9%というところを怪しまれているようです.紅茶のテアフラビンは抗菌作用があることで知られています.確かのど飴が売られていたと記憶していますが...あった,見つけました.このテアフラビンは紅茶の発酵過程で緑茶のカテキンが酸化して生成するポリフェノールです.長崎大学大学院医歯薬学総合研究科天然物科学研究室のサイトによればその生成にはまだわかっていないことが多いと書かれています.このページの下の方にあるカテキンの参加経路など拝見すると,この式が理解できるというのはすごいですね.ここに書かれていますが,紅茶でなくても,緑茶にリンゴの皮やバナナスライスなどを入れることで,テアフラビンは生成されるそうです.緑茶にリンゴの皮を入れて飲めばインフルエンザ予防に効果あるのでしょうか?
さて.紅茶がインフルエンザウイルスを99.9%無力化するという主張を統計リテラシーに照らして検証してみましょう.まずは主張の根拠を探すことから始めます.行き当たったのが,紅茶協会のインフルエンザに対する感染伝播阻止効果という資料です.ここにはインフルエンザウィルスを何と99.999%無力化すると書かれています.どうやら培地上で100万個以上あったウィルスが紅茶を作用させたことで検出限界の10個以下になったからということが根拠のようです.検出値を検出限界で割り算して何倍というのは残留放射線のケースでもそうでしたが,よくある間違いです.検出限界はバックグラウンドの変動という確率的な現象を数値化したものという認識が欠けています.**%無力化するという表現も気になるところです.100個のものが1個に減ったことを無力化と呼んでいいものか.とはいえ,紅茶がインフルエンザ予防に何らかの作用がありそうだということはわかりました.ウィルスのスパイクに付着するというメカニズムも合理的です.但し,下に小さく書かれているように「ヒトでの実験は実施していません」ということは知っておくべきです.
そこで,ヒトを対象にした研究を調べてみました.見つけたのが,岩田雅史他(1997), 感染症学雑誌 第71巻 第6号, 487-494, 紅茶エキスのうがいによるインフルエンザ予防効果です.この論文で示されているのは,in vitroだけでなく約300名を対象としたin vivoの実験を実施している本格的な研究です.材料,対象および方法のところで,うがいには,紅茶(日東セイロン紅茶)を50°Cで30分抽出して0.5w/v%無糖液を作成した,などと書かれているのがジワジワきます.この論文でペア血清というのは,同一人物から一定間隔で採取した二つの血清のことで,ウィルス血清抗体価は過去にそのウィルスに感染した履歴の影響を受けるので,感染前後での抗体価を比較する必要があるのです.ですから,感染の有無を判定するためのペアであって対応があるということではありませんので注意が必要です.実験結果はtable3にまとめられていますが,ペア血清が得られた制御群125名中感染者が61名,実験群134名中47名..ってインフルエンザにかかり過ぎのような気がしますが,カイ二乗検定の結果は有意水準5%で有意性ありと結論しています.JMPではこんなふうになります.
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検定結果は5%有意ではあるけれども1%有意ではない程度のようです.臨床試験にはよく5%有意であることのみ示した研究が多いですが,できるだけp値も併記して頂きたいですね.実験データから何らかの判断を下すのはときには利害関係がある研究者だけではなく,一般人の立場から判断したいからです.もちろん,そのために最低限の統計リテラシーをみっている必要はあります.
この研究では制御群は何もしていないのですが,本来は水や塩水でうがいをしてもらうべきでもあったと考えます.紅茶うがいは液体でうがいをすることに主たるインフルエンザ防止の効果があったとも考えられるからです.
以上を踏まえると,少なくとも99.9%という数字には惑わされない方が良いように思います.紅茶の効用をアピールしたいのは理解できるのですが,ワクチン嫌いなお母さんがいて,うちの子には紅茶飲ませてるからワクチン接種しなくて大丈夫,などというケースが多くなればそれこそインフルエンザ流行に拍車をかけてしまうかもしれません.
しかしながら,個人で臨床試験をするのは無理です.せいぜい自らが実験動物になるくらいですが,人間の場合は認知バイアスという思い込みもあります.そこで日常的な統計リテラシーの練習としてできることとして,仮説をたててそれを検証することがあります.紅茶を世界で一番飲む国はご存知でしょうか?先のロシアでもイギリスでもなく,実はトルコなのです.
それならばトルコではインフルエンザは流行しないのではないか?という仮説を立ててそれを検証してみます.WHOの2018年1月の報告,Influenza Update number 307. 22 January 2018 がありました.トルコはどこかと探すと黒海と南のエーゲ海・地中海に面しているあたりです.微妙な黄土色なのでinfluenza pisitiveが21-30%です.イギリスも30%以上ですから,しっかりとインフルエンザが流行しています.他にもトルコ日本国大使館が在留邦人に出した,トルコ国内におけるインフルエンザの流行についてなどから判断するに,紅茶のインフルエンザ予防効果は期待しすぎない方が良いようです.
今日は冷えますので,皆様もお気をつけください.それではまた,
タグ:JMP
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2018年10月27日

等高線を読む際のヒント

紅葉の季節が近づいてきました.どこかに山登り(といっても本格的な登山ではないです)にでもいこいうかなと地図を眺めていて思ったことを本日は.
「モデルのあてはめ」は実験データを表現する数式を導出してくれるJMPの代表的な機能です.ですから,モデルとは数式そのものを指しています.一方,モデルには日本語で模型という意味もあります.わたしはモデルを考えるときは常に模型のイメージを大切にしています.模型といっても,いわゆる工作模型の類です.応答関数の性質やその挙動を把握するのには実験データを仲介としてシステムを模型化するという考え方が重要です.この意味では,予測プロファイルよりも曲面プロファイルの方が直感的に理解しやすいので,必ず曲面も見ることにしています.一度に見れるのは二因子までに限定されますが,他の因子を色々と切り替え,スライドさせて,それこそ捻くり回すのです.
工作模型は偽物ではありますが,特に精密にできた模型には本物以上の魅力があります.ときには本物以上の機能が備わっていたりします.誤解のないように補足しますと,本物では検証不可能なことが模型を使って可能である,というような意味です.例えば,何らかのシステム開発ではUMLを用いて分析・設計を実施します.UMLで表記したビジネスモデルをオブジェクト指向で分析するのはシステム開発では必須の手順です.一方で,技術開発ではまだまだ実験計画によるデータに基づくモデリングは必須のものとはなっていません.システム開発のように技術開発もすべきである,というのがわたしの持論です.
JMPの一連のプロファイルはこのために欠かせないツールです.松岡正剛さんは千夜千冊の書評で,松井広志(2017)『模型のメディア論』青弓社を取り上げて,「モデリングの真骨頂は可塑的であることだ。」と看破されていますが,わたしもJMPのプロファイルの長所は応答関数を可塑的に変化させることができる点にあると考えています.
ところで,曲面プロファイルは,模型のイメージには近いのですが,応答が複数になると手に負えなくなります.そこで多目的最適化では等高線プロファイルが活躍します.とはいえ,しょせん二次元モデル(マップ)なのでその情報を三次元に再構築する能力がわたしたちに必要となります.サイクリングで峠に登るコースを選ぶときなどで,等高線を読むのに慣れているのでわたし自身は問題ないのですが,経験的に,これが苦手な人がいらっしゃいます.そこでちょっとした小技をお教えしましょう.
データは何でもいいのですが,サポートファイルの「MCDAデモ事例.jmp」を使って説明します.まずは,グラフメニューから等高線プロファイルを選んで,「予測式_膜厚」_を「Y,予測式」に割り当てます.このときN2とSiH4を誤差因子にも割り当てるのが味噌です.(この例では他の因子は無視します.)水平はN2,垂直はSiH4をチェックしてから,Y軸をダブルクリックして範囲を最小−1000,最大を3000とし,同様にしてX軸の範囲も最小−300,最大300に変更します.あくまでも等高線プロファイルの例として示しているだけで,範囲を拡張しているので現実的な例では全くありませんので,この点はご注意ください.
さて,予測式(この場合膜厚)の応答関数が赤線で示されていますが,もっとわかりやすくするために赤三角から「等高線グリッド」を設定(デフォルトで構いません)します.この時点で既にお気付きのように青と緑の線が示されています.これらは膜厚の予測式をそれぞれSiH4とN2とで偏微分した係数の予測式(∂予測式)であり,即ち応答関数の曲面の傾き(の等高線)を示しています.デフォルトでは0の等値線が示されているので,これは山の尾根線に相当するのものです.青線の線上ではSiH4の変動に対する膜厚(の予測値)の変化は0になっています.二次までの応答関数を仮定した場合限定ですが,山の尾根道,山登りの用語でいうといわゆる乗越(のっこし)ですね.もちろんか谷道の場合もあります.(三次までを仮定するならば,林道のような片側が崖で片側が山のような道というケースもあります.)そして,両者が混じった点が山の頂上あるいは谷底,あるいはいわゆる鞍部になります.
この2つの∂予測式が応答関数の把握に役に立ちます.このためには2つの∂予測式の等高線グリッドを挿入してみます.
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ここから応答曲面が再構築できますか?わからないという人は,膜厚の下限をスライダーで変化させるとこの曲面は鞍部の形状になっていることがわかります.曲面プロファイルだとこんな感じです.
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このプロファイルに誤差因子を割り当てるのは,本来はロバスト設計のための機能です.ここでは「満足度の最大化」は実施していませんが,膜厚を最大に,両方の∂予測式を0に制約することでロバスト解が得られることになります.それだけでなく,通常の内乱でなく外乱の影響を考えるときに役に立ちます.例えば,SiH4とN2のガス流量の変動に対しては,2つの∂予測式の上加減をそれぞれN2は±3, SiH4は±0.5などと入力するとこのようになります.
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この図の白抜きの領域がガス流量の変化にロバストになっています.費用をかけてガス流量の安定を図るならば,SiH4の方が効果が高いということがわかります.
簡単な例ですが,JMPのプロファイルの素晴らしさが伝われば幸いです.秋深くなってまいりました.皆様も風邪など召されませんよう.それでは. 
タグ:JMP
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2018年10月20日

中国のSummit(Discovery Summit China 2018)

いよいよ今年のDiscovery Summit Japan2018も来月に迫りました.わたしは今年もコミッティメンバーとして参加します.ここを読まれているかたで参加される方がいらっしゃいましたら,ぜひ当日声をかけてください.
今年のユーザーセッションは全部で20ありますが,発表者の所属やタイトルからラフに分類しますと,アカデミック系が4件,薬学関連が5件,SASからの発表が3件,その他が4件で産業分野からの発表が4件となかなかバランスが取れているようです.AGC(株)旭硝子からの発表は要旨を拝見するに,純粋な製造分野のご発表ではなさそうなので(もちろん発表は楽しみにしてます),これを数に入れなければ,日本ゴア(株),(株)日本触媒,キリン(株),(株)ジャパンセミコンダクターの4件が産業分野の発表となります.このうちの1件はわたしが関与しているのですけど,他の皆さんの発表を楽しみにしています.
本音を言うと,産業分野からの発表はもっと増えて欲しいなとは思ってます.それと言うのも,今年4月に上海で開催されたDiscovery Summit China 2018には数で負けているからです.DSC2018(と言うのでしょうか?)は,今年で4回目になるので日本での初開催の翌年から始まり,今年もたいへん盛況だったときいています.参加者は300人以上とのことなので,規模はほぼ日本と同じでしょうか.ユーザーセッションが全部で12あって,そのうち2つはSASからの発表なので,発表数はそれほど多くはありませんが,発表企業の分野が偏っていることが特徴的です.半導体が5件,バイオ・医薬が4件,残りは化学が1件だけです.実質的に産業系製造業はほぼすべて半導体ということで中国の半導体分野にかける意気込みが感じられます.それとEvent Highlightsの写真を見ると薬学系のセッションでの女性の参加が目に付きますね.
以下,簡単に要旨を読んでみましょう.
 
1.Yangtze Memory Technologies,Data Analysis in NAND Flash Development and Testing
ご存知のように,YMTCは紫光集団(Tsinghua Unigroup)が中国大手の国有半導体メーカ―である武漢新芯集成電路製造(XMC)の株式の過半を取得て誕生した中国国内最大の半導体メモリメーカーです.発表内容そのものには目新しいことはありませんが,意気込みは感じます.3DNANDフラッシュの量産工場を建設中で,DRAMやファウンドリのラインも計画していると聞いていますから,その勢いのあらわれでしょうか.
2.Western Digital China,Commonality Analysis in Manufacturing Applications of Big Data and Predictive Quality Assessments
あのWestern Digitalからは予測品質評価にJMPを使うという発表がありました.こうして見るとやはりBig Data関連が多いですね.まだ開発業務にはJMP活用はされていないのかもしれません.
3.The Standardization of Big Data Analysis and JMPレジスタードマーク Experimental Flow
この発表者は台湾の大手メーカーとだけで所属企業が伏せられています.ということは宣伝目的ではないということですが,内容はJMPのデモではないかと思われます.中国ではJMP初心者が多いのでしょう.興味はありますが,ちょっと内容は不明です.このようなチュートリアル的な発表は米国では結構目につきます. 
4.Design of Experiments: The Efficient Method to Predict the System Signal Integrity Performance in Volume Production,Intel
実験計画でSignal Integrityの最適化を図るという内容で,シミュレーションにもJMPによるDOEを導入しているようです.何しろあのインテルですから.因みに,ご存知ない方のために付け加えると,Integirityは訳すと「まとまり」「一体」となりますが,Signal Integrityと言ったときは「完全無欠の綺麗な信号波形」を意味します.回路の信号配線は反射で波形が乱れるのですが,回路設計を工夫することで綺麗な波形を得る技術がSignal Integrity(SI)なのです.LCR回路の計算計算ではSPICEという有名なソルバーがありますが,こういうソフトを使ってDOEで回路設計を最適化するという事例のようです.詳細が知りたいですね.
5.Big Data Mining in IC Manufacturing: Defect Prediction Model,SMIC
SMICからはウェハ受け入れ検査にJMPを使うという発表がありました.因みに,要旨にあるWATとはwafer acceptance testの略です.欠陥予測とバーチャルメトロロジーという以前日本でも流行した技術にJMPを使うという内容のようで,個人的にはとても興味あります.
 
中国の発表から伺うに,少なくとも中国の半導体メーカーではJMP導入に積極的であるようです.その理由として推察するに,米国の半導体大手がJMPを使っているからと考えています.

それではまた来週.
タグ:JMP
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