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2018年08月25日

疲れる話

まだまだ暑い中でエアコンが故障してしまいまして,ダメ元でお願いしたら翌日には修理に来てくれたのですが,その晩は大変な目にあいました.寝不足でバテバテだったのですが,来ていただいた修理の方がわたし以上にお疲れの様子.聞いてみると,やはり今年の夏は大忙しのようで,その日も10件のお宅を回らなければばならないとか.冷却ガスのボンベを運ぶのも辛そうだったので,手伝ってあげたりしたのですが,あの様子では疲労のために作業効率も上がらないでしょうし,何かの事故に繋がらないかと心配してしまいました.
本日は疲労について考えてみます.何らかの作業・活動をシステムと捉えたとき,その出力として疲労あるいは疲労感が考えられます.あるいは倦怠感などと呼んでもいいでしょう.作業効率というもう一方の出力特性とのトレードオフとしてシステムの最適化を考えるならば,疲労を数値化する必要があります.まずは,Apple WatchやFitbitに代表される活動量計を使うことが思い浮かびます.加速度センサーで歩行やランニングなどの運動量を計測するわけです.この指標は簡便はありますが,どうも因果関係が逆のような気もします.活動するから疲労するわけなので.
ご存じない方も多いかもしれませんが,実は疲労度計なるものが存在します.自律神経の機能低下を計測するのですが,その原理は脈波という末梢血管の振動波形の計測で,脈波センサーをハンドルに組み込んでドライバーの体調急変を予測するなどという試みがなされています.疲労計測にはロー波形を微分処理した加速度脈波を周波数解析し,その低周波成分と高周波成分との比を指標にします.その比を性別や年齢などで構成されたルックアップテーブルによって疲労度に変換します.わたしはまだ試したことはないので,一度計測してもらいたいと思っています.Apple Watchに実装されたら面白いですね.疲れてきたようだから少し休もうだとか.
疲労のバイオマーカーもいろいろと研究されていて,唾液中のヘルペスウイルス(HHV)の活性度を計測するという手法が開発されています.HHVは水疱瘡の原因ウイルスとしてご存じの方も多いと思いますが,治癒しても死滅せずに末梢神経に潜伏していることが知られています.宿主が疲労やストレスにさらされたりすると,宿主に見切りをつけて脱出を試みようと再活性化するという仕組みを使ったマーカーです.因みに再活性化があるラインを超えると帯状疱疹として発病するわけです.
疲労とか味覚とかをシステムの出力と考える際に難しいのは,人間には主観があるということです.上述した手法は,客観的に疲労を計測するものです.人間の精神力というのは侮れないもので疲労していても気が張り詰めているとそのことに気づきません.それだからこそ過労死なども問題になってくるわけです.信長に焼き討ちにあって焼死した快川紹喜は心頭滅却新すれば火もまた涼し」と辞世を残しました.信長もその2ヶ月後に炎に囲まれてそのわけですが,そのときこの辞世が彼に届いていたかは興味深いところです.(これは紹喜のオリジナルではなく,もともとは唐代の詩から採った臨済宗の公案だったようです.)
 そこで,疲労の主観的な数値化もなされています.チャルダースケールが世界的に使われています.14項目の質問の0から3の点数をつけるというよくある質問票による指標です.ただ,チャルダースケールはここ最近の疲れ具合を示すものですから,今どれだけ疲れているのかを示す疲労スケールも開発されています.大阪市立大学の研究グループは心身の疲労を総合的に数値化する指標を開発していますが,これの問題は100項目以上に及ぶのでそれだけで疲れてしまうということでしょうか.これらは社会心理学の研究を目的とされていますが,臨床ではもっと簡易な指標が必要になります.それがVAS(Visual Analogue Scale)です.臨床では痛みの測定尺度として簡易でしかも感度が高いという理由で世界共通の尺度となっています.(例えば,聖泉看護学研究  Seisen J. Nurs. Stud., Vol. 4. pp.83-90, 2015(疼痛アセスメントにおけるVisual Analogue Scale:VAS 使用に関する文献レビュー)PDFがダウンロードされますのでご注意ください.)これを疲労の評価に適用しようという試みで,日本疲労学会というのがあって,そこに疲労感VAS検査方法(いきなりPDFがダウンロードされるのでURLは載せませんが,TOPにリンクが貼ってあります)が掲載されています.ラインの人員配置の効率化(オペレータの疲労を勘案した本当の意味での)などに適用できるかもしれません.
わたしも本日は猛暑が戻ってきて疲れたのでここまでにしておきます.それではまた.

この記事を書くにあたっては渡辺・水野(2018)『疲労と回復の科学』日刊工業新聞社,が参考になりました.
タグ:問題解決
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2018年08月18日

フォローアップセミナーのフォローアップ

先日のフォローアップセミナーには,暑い中での開催にも関わらず多くの方に参加して頂きました.この場であらためて感謝いたします.今回は読者限定セミナーという性格から先着順にはしたくなかったので,SAS社の営業さんから開催案内をしてもらうことにしました.このためか,蓋を開けてみれば予想よりも業界が偏ってしまいました.今後,同じセミナーを別の分野の皆さん対象に広げていく予定ですので,その機会があればぜひおいで下さい.それと第5講を対象とした今回の続きのセミナーは必ずやります.今度はもっとゆっくり時間を掛けて,懇親会の場で公開事例相談などをやるという案も出ていますので,実現したらお互い有意義なイベントになりそうです.
セミナー後に,当日使用したファイルを社内で配布してもよいかというお問い合わせをいただきましたが,本書購入者限定で(面倒おかけして恐縮ですが)個々にオーム社のサイトからダウンロードして頂くというサポートファイルと同じ扱いでお願いいたします.但し,第3講で使用したファイルは,当日お話ししたように没原稿のためのファイルなのでどこにもアップロードされていません.そこで今回のセミナーに参加できなかった方でご希望の方は連絡していただければ直接ファイルをお送りします.
当日使用したパワーポイントファイルを復習のために配布してほしいというお問い合わせもいただきました.本書のフォローアップセミナーということでテキスト持参で参加していただいているので,そもそも配布を資料はないはずだったのです.ところが,前日になって急遽,本書のドラフト段階で没にした内容をお話ししようと思い立ち,結果として第3講では配布資料を用意したほうが良かったかもしれません.とはいえ,私がセミナーで使っているスライドはAppleのKeynoteで作成しているので,そもそもMacユーザーでなければ開くことはできませんし,クラウド上で作業している関係で,私のMacでなければ開ないように暗号化されているのでそのまま配布しても役に立ちません.復習したいというかたがいらっしゃいましたら,コメントでお知らせください,何らかの方法を検討します.
ただ,当日の資料そのものは既に消去してしまっています.わたしはこのようなセミナーは一期一会のものであるべきと考えていて,資料の使い回しはできるだけしないようにしています.もちろん,一から作成するというわけではなく,ストックしているスライドから受講者の顔を思い浮かべてそれに見合うスライドを選択して,一つにまとめてから加筆・修正を加えています.そもそもパワーポイントが使いこなせない性質なので,いろいろと工夫して今のような流儀に落ち着きました.パワーポイントについてはいろいろと思うところあり,やはり没にした原稿の「ひとやすみ」にも書いた記憶があるので,そのうちブログに掲載します.
さて,セミナー講師の経験からわかるのですが,今回のセミナーでは皆様熱心に聞いてくださりました.一澤帆布のことをお話しした際に女性の方だったと思うのですが,「いい言葉だな」という感想を言ってくださったことが嬉しかったです.この場で改めて紹介しますが,一澤帆布というのは京都の有名な帆布鞄の老舗で,そこのHPに「私たちの工房には製造マニュアルがありません。製造マニュアルに頼ると、人の知恵と工夫が生まれないからです。」と書かれているのです.実戦ではマニュアルは役に立たないどころか,技術者の熱意をスポイルするというわたしの考えに合致するものです.
本書では「問題解決の手引き」と称したこともあって(注意深く抽象的には書きましたけれど)問題解決のマニュアル的な捉えたかをする人もいるので,この点はフォローアップセミナーではぜひ強調しようと思っていました.斉藤一の言葉も紹介しました.斎藤一をご存知の方が何名かいらっしゃいましたが,新選組の三番組組長で剣の腕は沖田総司と双璧をなし,永倉新八をして「斎藤は無敵の剣」と語らしめたという人物です.明治政府の人材の薄さ故か懐の広さ故かはわかりませんが,かつての仇とはいえ彼は後年警視庁で警部にまで重用されるのですが,真剣での斬り合いで語ったと言う言葉が残っています.「どうもこの真剣での斬り合いというものは,敵がこう斬りこんで来たら,それをこう払っておいて,そのすきにこう斬りこんで行くなどという事は出来るものではなく,夢中になって斬り合うのです.」司馬遼太郎の新撰組血風録が好きなわたしのセミナーではよく近藤勇などが出てきます.
誤解の無いように補足しますとマニュアルがダメだ不要だと言っているわけでは無いのです.マニュアルはその背後にある考えを理解せずに使うべきでは無いという意見です.また,背後にある考えを理解しないうちはマニュアルは書くべきでは無いということです.この話は後日することにして,本日はここまで.それでは.

2018年08月11日

台風とJMP

アドインの話の続きを書こうと思ったのですが,同じ話が続くのは避けて本日は台風の話でも.
先日の台風は,合同台風警報センター(JTWC)ではかなり前から上陸はしないとの予報でしたが,気象庁の予報では数日前まで関東直撃でした.個人的にはJTWCの予報の方が当たるような気がしているのですが,まっすぐに関東地方に向かってくるのでどうなるかと興味深く観察していました.結局,JTWCの予報通りになり,何事もなかったように過ぎ去ったわけですが,犬吠埼に最接近した以降の後半の進路は定性的には気象庁の予報に近かったようにも思います.気象庁も予測精度については米軍に引けは取らないのでしょうけれど,台風の進路の長期予報をしてくれないのが難点ですね.おそらく予報が外れ(国民生活に大きな影響が出)ることを恐れているのでしょう.それと,ワーストケースを想定して予報を出しているのかもいるのかもしれません.その予報をもとに市町村が防災対策を立てるので,予報を信じて対策を怠るようなことのないようにという配慮もあるのかと勘繰りたくなります.狼と少年という童話もありますし,おそらく,そのようなことはないと思いますが.
知り合いと話していて,梅雨明けが早かったり,この時期に台風が来たりとどうも季節が早まっているのではないかと言うので,そうかな?と思って調べてみました.今日はその話です.
私の感覚でも台風は9月のものなので,それはなぜかと考えるにおそらく夏目漱石の二百十日にあるのではないかと思い当たりました.このほぼ会話文からなる物語は漱石の実体験に基づいたものだそうで,タイトルの二百十日とは立春から数えて210日目のことで,今年は9月1日になります.この日は台風が来る確率が高い日と言われていて,実際,物語で主人公は台風に遭遇します.おそらくデータに基づいたものではなく台風の備えを怠るなという農家の警戒標語のようなものだったのではないでしょうか.
9月1日に日本に到来するということは発生は8月ということになります.このことをデータをもとにJMPで10分可視化してみます.このブログをご覧になっている方にJMP歴半年未満のかたもいらっしゃるということを最近知りましたので,少し丁寧に手順も書いておきます.
まずデータは気象庁の「台風の統計資料」にあります.ここには統計を開始した昭和26年(1951年)以降の台風の発生数,接近数,上陸数がテーブルで表示されていて,2017年までに記録はCSVフィルでも提供されています.このデータをJMPに取り込むのにもっとも簡単なのは「ファイル>インターネットから開く」でURL入力画面を出して,例えば発生数ならば「https://www.data.jma.go.jp/fcd/yoho/typhoon/statistics/generation/generation.html
を入力することです.「OK」でそのアドレスにあるテーブルの種類が表示されますので,「2017年まで...」のほうを選択して「OK」です.
さて,このJMPテーブルを分析・可視化するにはもうひと手間かけなければなりません.まずは「年間」列は集計値なので削除します.次にデータを名義尺度から連続尺度に変換しますが,ここらへんがノウハウと言うのかもしれませんが,いきなり「列情報」を呼び出すよりも,先に「テーブル>列の積み重ね」を実施しておきます.(もっとも,「列属性の一括設定」を使えばたいした手間の違いはないのですが.)それから尺度を変換して,その際欠測値になったデータに0を入力します.もちろん「列>再コード化」を使ってください.「年」列は名義尺度のままでかまいませんが,「年」という値が入っている行を選択してでそれらを削除します.積み重ねを先に実施しておくと,データフィルタを使わないでも下の方にまとまっているのでこういうときに便利です.同様に接近数と上陸数も加工しておいてから,「テーブル>結合」です.
さて,ここまでくれば後は楽しいグラフ作成のお時間です.グラフビルダーでどんなグラフを描こうか考えるとワクワクしますね.色々トライ&エラーを繰り返しつつ,今回は発生数,接近数,上陸数というデータがあるので,それらを積み上げた棒グラフにしようと思いつきました.そのためには,発生数から上陸数と接近数とを差し引いた数を「その他」と定義して日本に関わらなかった台風の数を計算しておきます.そうするとこんなグラフが描けます.この図で青が接近数,赤が上陸数,緑がその他です.
image001.png
一つ注意があって,この「その他」の定義では月をまたいだ台風の活動が正確にカウントされません.ですので,値がマイナスになったりもしますが,平均値にするとそこらの粗は隠れますし,まあ,とりあえず積み重ね棒グラフにしたかったので細かいことは目を瞑ります.この図から読みとれることは,台風の発生は8月が一番多いこと,9月は上陸数は8月と同程度であること,10月は7月並みに台風は発生するけれど日本に関わらないものが多い,などなど.
 これだけでは面白くないので年を読み込みます.異常気象などと絡めるならば別の気象データが必要になりますが,この場では「グループY」にドロップします.水準を三つにしたのがこの図です.
image002.png
 どうでしょう.予想に反して,1974年以前と比較して近年(1996年以降)はむしろ9月に台風が多くなっているようです.特に上陸した台風の数は9月の方が多くなっているくらいです.従って,台風に関する限り季節はむしろ遅れていることになります.
 とはいえ,データからは台風は8月のものと言ってもいいようです.とはいえ,私たちの意識では台風は9月のイメージ.この解離はなぜかと気象庁のデータを見ならが考えるに,9月が台風の月と思われている理由を見つけました.中心気圧が低い台風 (統計期間:1951年〜2018年第5号まで)ワースト10が載っていますが,このうち8月上陸は2つ,9月7つ10月が1つとなっています.9月の台風は過去に大きな被害をもたらしたのでそれだけ人々の意識に残っているのでしょうか.
まだまだ二百十日まで間があり,これから本格的な台風シーズンを迎えることになりますが,皆様も対策怠りなきよう.
それではまた.
タグ:JMP
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2018年08月04日

パラメータ設計のアドイン(その2)

先週の続きです.パラメータ最適化のためのアドインについてそれぞれの違いなどを説明しようと思います.本日はHOPEアドインとSRPDアドインについて.
もっとも端的に説明するならば,これらのアドインを使えばパラメータ設計のためのJMP操作が簡単になるということでしょうか.
HOPE.png
この図(クリックで拡大表示します)に示したように,HOPEアドインの設計画面にはJMPでは赤三角から「因子グリッドのリセット」で呼び出さなければならない各種設定がGUIに実装されています.これだけで便利なので,なぜJMP標準になっていないのか不思議なくらいです.見た目だけではなく,実はこの二つのアドインは今年の1月13日の記事で言及していますように,「実はJMP単独ではスクリプトを書くでもしないと困難なことがあって」という問題に対応しています.その一つが先週お話しした範囲を目指す最適化のための満足度関数の定義であり,更にもう一つが,品質工学でいう動特性のための信号因子を設計に取り込みにくいということです.(誤差因子と信号因子は本書ではそれぞれノイズ因子と目的因子という名称で呼びましたので,以降ではこの名称を使います.)これらの因子がJMPでどのように扱われているかというと,ノイズ因子だけはグラフメニューのプロファイルを実行する際に「誤差因子」としてオプション設定でお目にかかれます.ある因子(連続量)を誤差因子に指定すると,その因子による(特性の)予測式を偏微分した関数が予測プロファイルに出現します.満足度はゼロ望目に自動で設定されていますので,「満足度の最大化」によってその因子の影響を緩和した最適化が可能となり,結果としてロバスト最適化が可能になります.この機能はもちろん便利なのですが,システムのロバスト性を点で目指してしまうためあまり実用的ではありません.例えば,予測式が二次関数になっていたとしてその頂点を満足度最大にしてしまうので制約が強すぎるのです.その因子がノイズとして動いてしまっている状況であれば,二次関数の二次係数を最小にするような最適化が実務的には望ましいはずです.このため,わたしのセミナーではこの機能に言及せず,プロファイルを弄りながら予測式の傾き(あるいは二次係数)を小さくするにはどうすれば良いかを考えてもらっています.
HOPEアドインではばらつきは範囲で定式化されます.特性の変動する範囲(Range)を最小にすることがロバスト化であると捉えるわけで,実務的にはとても扱いやすいと言えます.但し,この定式化のためにロバスト化の制約を数値で設定しなければなりません.平坦化を目指すに,真っ平らという極限ではなく,Rangeにしてどのくらい以下であれば良いかを考えなければならず,技術者の考察がとても重要になります.
ノイズ因子はまだ良いのですが,目的因子を設計に取り込み難いことの方が問題です.HOPEアドインはこのためにあるといっても過言ではなく,現在は慶應大学大学院の客員教授の高橋武則先生のHOPE理論をベースとして,その理論検証のために開発されたアドインです.実務的にも大変有効でHOPEアドインを使えば,範囲を目指す最適化も可能になりますし,目的因子(HOPEアドインでは入力)を取り込んだ柔軟な設計も可能となります.HOPEアドインを使った最適化について詳しく知りたい方は,河村・高橋(2013)『統計モデルによるロバストパラメータ設計』日科技連,を参照してください.この本にはHOPEという言葉は出て来ませんし,HOPE理論についても書かれていませんが,全ての例題はHOPEアドインを使って解かれています.
残念なことにHOPEアドインは一般公開されていません.一つにはSAS社の公式アドインでないため,どのような結果が出ても誰も責任が取れないという事情があります.といっても,最適化のライブラリはJMPの機能を呼び出しているだけですから,実務にも十分使えますが,バグがないというわけではないのでそこは利用者の責任で使うことになります.それと,最近は落ち着いて来た感がありますが,機能変更が頻繁でマニュアルの更新が全く追いついていない状況であり,一般公開して間違った使い方が広まってしまうのを危惧しているという事情もあります.とはいえ.その存在をここに明かしてしまった以上,入手方法についてもお知らせする必要があると思いますので,興味がある方はコメント欄でお知らせください.(前にも書きましたが,コメントは私のところで一度止まるので内容が公開されることはありません.)
一方,島根大学の河村先生は別の書籍,河村(2016)『製品開発のための実験計画法』近代科学社ではSRPDアドインというHOPEアドインの派生版を使っておられます.こちらはJMPの正規ライセンス保持者かつ書籍購入者であれば誰でも書籍に記載されている方法で入手できます.SRPDアドインは一言で言うとHOPEアドインのロバスト設計に特化した機能限定版と考えてください.設計やモデリングの画面等はほぼ同じであり,SN比や感度の計算なども実装されているので.品質工学によるロバスト設計をやるだけならばSRPDアドインも良い選択肢です.(因みにSRPDはSatistical Robust Parameter Designを意味しています.)
これら二つのアドインは外側直交計画という品質工学特有のデータ構造をJMPに実装しているところが大きな特徴です.JMPだけでは作成に手間がかかるL18やCCDもプルダウンで指定できます.過去に品質工学をやってうまくいかなかったけれど,JMPを使ってもう一度当時のデータを分析してみたいならば必須のアドインです.
それでは,なぜ本書でMCDAアドインというまた別の派生版を開発したかというと,上記二つのアドインがJMPの枠から少々はみ出ているところがあって,本書の対象であるJMP初心者が戸惑うことを危惧したためです.例えば,HOPEアドインではモデリングに独自のGUIが実装されていて,結果の表示や統計データの出力などがJMPとは異なっています.更にはデフォルトでは寄与率基準というJMPには実装されていない基準でステップワイズが走ります.(JMPデフォルトの最小BICc等を選択することはできます.)いわば独自の世界が展開されているので,経験者にはとても使いやすくパワフルなアドインなのですが,初心者には荷が重いところがあります.これに対し,MCDAアドインにはモデリングに独自の画面はありません.「モデルのあてはめ」で作成した予測式をそのまま指定するだけです.「JMPとの繋がりが良い」ことがMCDAアドインの特徴です.
更には,HOPEアドインもSRPDアドインもトライアルライセンスでの使用は認められていません.(例外はあります.)本書はトライアルライセンスでJMPを初めて触る技術者も対象にしたため(それにしては難しいとよく言われますけど),新たに別のアドインが必要になったのです.といっても,無制限に拡散することを避けるため(その心配はないのかもしれませんが),SAS社との取り決めで唯一「本書の購入者である」という制約は掛けざるを得ませんでした.
その他のMCDAアドインの特徴(実はこのほうが大きい)については後日改めて説明することにして本日はここまで.それでは.
タグ:JMP
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2018年07月28日

パラメータ設計のアドイン(その1)

パラメータ設計のアドインについて質問を受けました.私の知っている限りでは,本書のために開発したMCDAアドイン以外にも,HOPEアドインとSRPDアドインがあります.実はこの三つのアドインのベースは同じものなのですが,それぞれの機能と思想が違っています.それらの違いについてお話しする前に,本日はまずその1としてなぜアドインが必要なのかについて説明しておきます.
JMPでは「満足度の最大化」でパラメータ設計ができるのはご存じでしょう.「プロファイル」とシームレスに繋がっているので使いやすい一方で,本格的なパラメータ設計には機能面で少々物足りないことも事実です.例えば,実験計画で応答の目標を設定する場合,「最大化」「最小化」以外では「目標値に合わせる」という三つの選択肢しかありません.(厳密には「なし」という選択肢もあるわけですが.)このとき,目標値に合わせる際に下側限界と上側限界を設定します.例えば,スペックが25±5であるならば,下側限界に20,上側限界に30と入れればいいわけです.
ところが,スペックはそのままで23を狙いとする場合は,「予測プロファイル」の赤三角から「最適化と満足度>満足度の設定」で「応答目標」を設定しなければなりません.
DraggedImage.png
これが面倒だからと,満足度関数のハンドル(小さい四角)をドラッグしてもうまくいきません.細かい仕様は不明ですが,満足度関数のハンドルをドラッグするとその度に関数を新たに引き直すようです.数値的にというよりは画像処理的に満足度関数が設定されているような感じです.とにかくプロファイル上で満足度関数に微妙な修正を加えるのが困難なことはみなさんも経験あるでしょう.
とはいえ.このような点を目指す最適化のための満足度関数はまだ何とか設定可能ですが,どうしてもJMPでは設定できない最適化のケースがあります.それは点ではなく範囲を目指す最適化の場合です.どういうことかと言いますと,応答の値が例えば20から30の範囲に収まっていさえすればよいというような最適化の場合です.このような範囲を目指す最適化は,特に多目的最適化の場合は重要です.なぜかというと,多目的最適化の場合,それぞれの特性に優先順位があるのが普通なので,優先順位が低い特性に対しても点を目指すと,制約が強すぎてしまうからです.20から30の間にありさえすればよいのに25を目指してしまうと優先順位の高い特性がそれに縛られてしまい,真の最適解が得られなくなってしまうのです.
一つの手段として「満足度の設定」でデフォルトが1の「重要度」を大きく書き換えることができます.しかし,この方法で得られた解は特定範囲に収まれば良いという制約を前提としていません.そこで「満足度の設定」で満足度関数の形状を定義しようとすればこの問題が理解できるでしょう.このような最適化を実現するためには満足度関数の形状は三角形でなく台形にならなければならないことに気づくはずです.しかしながら,ハンドルが三つしかない今の仕様では実現不可能です.どうしてもという場合は,応答の範囲を二つに分割してそれぞれの領域で,ステップ形状の満足度関数を設定して満足度の最大化の際にそれを繋げるというようなことをしなかればなりません.もちろん,スクリプトを組めばこのことは実現可能です.
スクリプトを組めば実施可能といっても,自作するには敷居が高いというのが本音です.そこで上で紹介した既製のスクリプトがアドインとして存在します.これらのアドインは上述した満足度関数の定義を実現するためだけではなく,それぞれに特徴があります.本日は台風が来るということで色々家の周りのことをやらなければならず,時間がないので来週以降それぞれのアドインの違いを説明していきます.
皆様におかれましても台風の備えに怠りなきよう.ともども被害のでないことを願っています.
それではまた.
タグ:Q&A JMP
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