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2018年09月15日

AI vs. 教科書が読めないこどもたち(その1)

本日は,新井紀子(2018)『AI vs. 教科書を読めないこどもたち』東洋経済新聞社について.少し前に読んでいた本なのですが,ブログに書くのを見合わせていました.迷った末にやはり書くことにします.というのも,この書籍のp73の表1-1に「10-20年後になくなる職業トップ25」というリストがあってその第4位に「コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析」とあるのを見た人から「JMPを使えるようになっても将来は役に立たなくなるのではないか」と聞かれたからです.確かにIBMのWatsonはSPSSを使って統計分析をしますし,そのような懸念も出てくるかもしれません.でも,これには著者の勘違いがあると思われます.このことについてお話しするために,本日は簡単にこの書籍をレビューします.
この本の構成は大まかには,東ロボくんとRST(Reading Skill Test)という著者が関わっていることに絡めて,前半はAIの一般的な解説,後半は中高生の読解力不足について警鐘を鳴らすという構成です.東ロボくんはご存知の方も多いでしょうが,2021年度の東京大学入学試験突破を掲げていたAIプロジェクトです.断念したとはいえ,MARCHレベルであれば入学可能なところまで漕ぎ着けたということですが,異なった見方をすれば,現行の入試制度では理解力のないロボットでも合格してしまうことでしょう.東ロボくんの示したことは「人工知能はすでにMARCH合格レベル」という表紙の惹句にあるのではなく,偏差値という指標が人の能力を測る物差しとしては不十分という見方をむしろすべきと思います.偏差値は標準偏差を一定の形式で規格化した数値に過ぎないので,何の標準偏差で能力を測るかということがより重要なのです.
ブログに書くのを迷っていたのは,基本的に著者の意見には同意すること多々あって応援したいのにもかかわらず,幾つかの点で批判的になってしまうかもしれないことを恐れたからです.売れている書籍なので,それだけネット上では批判的な書評も目につきます.確かにAIの部分に関しては,わたしも説得力が足りないように思いました.フレーミング問題のようなAIの限界についての指摘には度々言及されていますが,それが「弱いAI」というものですから当たり前のことです.「強いAI」は実現不可能(少なくとも当面は)ということの論拠に「弱いAI」の欠点をあげても仕方ありません.とはいえ,マスコミなどがAIというとき,AIとAI技術(AI要素技術の方がより的確と思います)を混同しているという指摘はその通りと思いますし,シンギュラリティなんてこないと断言されているのは個人的には好感を持ちました.
いずれにせよ,この本をAIの本と思わなければ些細なことです.それよりも興味深いのが「中高生の読解力」の低下を訴えている後半部分です.とはいえ,著者の主張が強いこともあってやや強引で,東ロボくんの失敗を中高生の読解力へと運ぶロジックはフォローできませんでした.著者のロジックは次のようなものです.
1.近い将来,AIが人間の強力なライバルになる.但し,AIが人間の仕事をすべて肩代わりすることは当面はない.
これは著者が東ロボくんの失敗から仮定したことです.これは私もそう思いますし,東ロボくんとは関係なく,多くのAI研究者がそう考えています.シンギュラリティを最初に唱えたカーツワイルでさえ,究極の楽天家だという別の理由ではありますが,AIが人間の敵となる未来は描いていません.

2.従って,今の中高生たちには「AIにできない仕事をするスキル」が必要である.
これは中高生に限ったことではないとは思いますが,同意です.

3.そのスキルとは,読解力を基盤とするコミュニケーション能力や理解力である.
ここに論理の飛躍があります.なぜ読解力だけを強調しているのでしょうか?仮に,読解力と偏差値との相関があるのだとしても,そもそも偏差値だけが能力の指標として適当なのでしょうか?とても重要なポイントの割りには説得力がありません.東ロボくんと言う偏差値を指標としたAIの開発で得られた仮説を,実際の場に適用するにはもう少し慎重な考察があっても良いように思いました.
著者が孫引用している論文,C.B.Frey and M.A.Osborne (2013), "THE FUTURE OF EMPLOYMENT: HOW SUSCEPTIBLE ARE JOBS TO COMPUTERISATION?" は,今後20年で現在のアメリカの雇用者の47%が就く職業がコンピューター化により消滅すると言う予測がセンセーションを巻き起こし,メディアでも盛んに取り上げられました.p37のFigure IIIはどこかで見たことありませんか?この論文の最後の一文(p45)には次のように書かれています.
For workers to win the race, however, they will have to acquire creative and social skills.
ここで言うcreative skillには説明が必要です.この論文ではO∗NETという米国の職業データベースを参照していますが,Table IにCreative Intelligenceの定義が書かれています.それによれば「The ability to come up with unusual or clever ideas about a given topic or situation, or to develop creative ways to solve a problem. 」と言うことで日本語での創造性とは少し違います.
わたしは著者の説くマニュアルや教科書程度の読解力では,creativeとはむしろ対極にあるような気さえしています.ここは書き出すときりがないのでやめますが,トム・クルーズが公表したことで知られるようになったディスレクシア(識字障害)の人がCreative Intelligenceを持っていないとは思えないのです.更には禅における「不立文字」の思想とも相容れないように思います.

4.ところが,日本の中高生の読解力は危機的である.
これは著者が開発した基本的読解力を調査するRST(Reading Skill Test)からの結論です.これについては後述します.(長くなったから来週にします.)

5.しかし残念ながら,読解力を高める方法はない.
著者は,精読に何らかのヒントがあるのではないかと書いていますが,読む能力は読むことだけでは向上しないように思います.ですから,著者が社団法人を設立してまで普及を願うRSTの価値は問題の解決には直接は繋がらないでしょう.
わたしは読解力を高めるには論理的な文章を書くことが一つの方法と考えています.例えば,マニュアルは読むことよりも書くことにこそ価値があります.そのマニュアルはそのマニュアルが役に立つものであるかを他の人に評価されるのが定めです.そのフィードバックによってマニュアルを書いた人の読解力は磨かれる「ああ,なるほどここはそうも読めるね.」のように.そう考えています.

著者の主張には完全には同意はしていませんが,現行制度や官僚的なAI推しの風潮に反旗を翻し,アクティブ・ラーニングは絵に描いた餅とまで切って捨てる著者の舌鋒には心地よいものさえあり,今後の活躍に期待しています.冒頭の「コンピューターを使ったデータの収集・加工・分析」の仕事が将来なくなるのか?についてのわたしの見解は次週に回すとして,ブログを書く制限時間が来てしまいましたので,今週はここまでにします.
それではまた.
タグ:JMP
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2018年09月08日

MCDAアドインのアップデート

本書のサポートアドインであるMCDAアドインのアップデートについてお知らせします.不具合修正と同時に若干の改良が加わりました.不具合というのは最適化の条件がローカルに保存できないというものでした.これができないと様々な最適解(の候補)の比較検討(即ち,このアドインの目的である多基準の意思決定)がやりにくいのです.実はこの不具合には気づいたのは昨年の出版記念セミナーで発表したときのことでしたが,クリティカルな不具合ではないので修正はいつでもいいからと開発者に報告だけはしていたのですが,ようやく修正していただけました.今回,JMPのプロファイルにある機能を実装してもらえたので,赤三角メニューの設計条件の保存は廃止しました.
それでは,どのようにして設計条件を登録するのか,そのやり方について説明します.まず,サポートファイルの「MCDAデモ事例.jmp」を開いてください.アドインメニューから「MCDAアドイン」を実行して,予測式に「予測式 膜厚」ノイズ因子に「位置L」「位置W」を割り当てます.
そうしたら,「RNG」を0以上0以下で制約,「MID」を最大化に条件設定します.この状態で「最適化」の赤三角から「最適化」して,最適解を導出してください.このファイルの予測式は複雑なので少し時間がかかります.プログレスバーが二回出るはずです.解が変われば最適化の計算は終了しています.この状態で「プロファイル」を呼び出します.この図のようになりましたか?
85-1.jpg
ここで「予測プロファイル」の赤三角から「因子設定>設定を記録」を実行しますと,設定の名前を入力するウィンドウが出てきますので「膜厚最大」とでも入力します.
次に,この状態で最適化の条件を変更します.例えば「RNG」を「なし」にして「MID」を「5000」に制約します.最適解が得られたら,上と同じようにして設定名を入力します.「膜厚5000」と名前意をつけたのが下の図です.
85-2.jpg
このように,複数の最適解の候補を横並びにして評価できます.二つの解の「RNG」と「MID」の差が表示されます.ラジオボタンをクリックするとプロファイルが切り替わります.もちろん,「プロファイル」の赤三角からデーターテーブル等へスクリプトを保存できますので,いつでも傾倒した最適解の候補をプロファイル付きで緑三角から呼び出せるのです.原因は調査中ですが,Mac版JMPですと呼び出しに少々時間がかかりレインボーカーソルが回ります.今回の改良は多基準の最適化に特に便利です.この機能があれば昨年のDiscovery Summitでの発表は楽だったのにと思います.皆さんもどんどんこのアドインを使ってみてください.実務における最適化には大変有効です.少々使い方が難しいところもありますので,このアドインの使い方に的を絞ったセミナーの開催も予定しています.おそらく今回も非公開に募集をかけますので,興味ある方はご一報ください.

<重要>
もう少しテストを重ねてバグのないことを確認したいので,アップデートアドインは9月17日の敬老の日までに公開します.既にMCDAアドインをお持ちの方は,お手数ですが公開日以降に再度前回と同じ方法でお申し込みください.

それでは本日はこれまで.

2018年09月01日

疲れる話は続く

今週は泊りがけで出張だったのですが,隣の部屋の宿泊客の鼾で眠れずひどい目に合いました.もともと枕が変わると寝付けないたちなので予算ギリギリに広い部屋に泊まっているのですが,低周波の音には効果はなかったようです.フロントに聞くと隣の人は連泊されるとのこと.お願いして別の部屋に変えてもらい,翌日はことなきを得たのですが,当日は朝早くに目が覚めてしまって,なんとなくTVを見ていました.自宅にはTVがないので,ホテルに泊まったときなどつい珍しくて見てしまうのですが,早朝ですと通販番組くらいしかやってないんですね.
アメリカに住んでいた頃はAs Seen on TVをこよなく愛していて色々な通販商品が自宅にあふれていました.英語の勉強になるのでQVCとかもよく見ていました.私はWeather ChannelとQVC(QVC Japanというのもあります)とMTVで英語を覚えたと言ってもよいくらいお世話になりました.
さて,早朝で他にやることもなく(NHKも始まっていない),通販番組を見ていたのですが,早朝ですと圧倒的に健康関連の商品が多いのです.高齢者向けの化粧品なども多いようです.おそらくこんな早朝に見ているのは高齢者が多いからでしょうか?その中で小林旭が使用者として主演していたある健康飲料の番組をなんとなく眺めていました.小林旭は名前くらいしか知らないのですが,石原裕次郎とともに2枚目俳優として当時の映画では圧倒的な存在だったそうで,その存在に押されてて宍戸錠が悪役に転向したとも聞いています.閑話休題.
その健康飲料ですが,疲労感を軽減するということです.ここに商品名を書くまでもないくらい,イミダゾールジペプチド配合というその飲料の特徴そのものズバリの商品名なので調べればすぐわかります.このイミダゾールジペプチドですが,大阪市立大学大学院 医学研究科 疲労医学講座のHPに抗疲労物質として有望と説明されています.そこには効用に関する発表論文一覧が掲載されていて,ぞれぞれの文献がPDFで読めます.例えば,一番上のJpn Pharmacol Ther(薬理と治療)vol. 36 no. 3 2008 「CBEX-Dr 配合飲料の健常者における抗疲労効果」にはRCT(Randomized Controlled Trial)の結果があります.そこに書かれている実験デザインを読んで,本格的な臨床実験はかくも大変なのだということを私たち技術者は知っておくべきです.これに比べたら工業系の実験計画は楽なものです.仕出し弁当まで用意して通常の食事の影響を除外しています.このCBEX-Dr 配合飲料というのが私が通販番組で見たイミダゾールジペプチド配合というその飲料そのもののようです.
統計手法としては「SPSS version 11.5(エス・ピー・エス・エス(株)) による統計解析を使用し,試験食群間比較について 対応のあるt検定を実施し,両側検定で,p<0.05 を 統計学的に有意とした。 」とあります.論文にはクロスオーバー試験とあり,4週間のウォッシュアウトを間に挟んで,対照群と実験群とを交換しています.CBEX-Dr 配合飲料の投与前後の比較をしているので,対応のあるt検定というわけです.
二重盲検にもなっている丁寧な実験と思いますが,一つ疑問なのはサンプルサイズが小さすぎないかということです.ひとまず1サンプルt検定を想定してJMPで標本サイズを調べて見ると(実験計画メニューの計画の診断>標本サイズ/検出力で「1標本平均」を選択します)でα=0.05,検出力0.8の場合,以下のようになります.先週お話ししたVAS(疲労の評価指標)の標準偏差のうち小さい対照群の値22.7を入力しました.この実験ではサンプルサイズが17ですから「検出する差」はおよそ16になります.
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負荷4時間後からの変化量で回復4時間後に二つの群のVASの平均値の差がもっとも大きくなりますが,その差は10程度です.ですから,この実験ではこの差を検出できる性能はないということになります.では,サンプルサイズはどれだけあればよいのかというと,今度は検出する差を10とすると標本サイズは43となります.20人以上のグループ同士での比較が必要ということですね.
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仮にイミダゾールジペプチドが疲労回復に効果があったとしても,わざわざ論文でCBEX-Dr配合飲料として市販商品に言及しかつ実験に使っている点にも疑問が残ります.この実験で使われたのは私が通販番組で見た商品そのものと思われますが,このCBEXっていうのは(chicken breast extract)の略なので,鶏胸肉抽出物で普通に鶏むね肉を食べればいいのでは?と考えてしまいます.鶏むね肉100gにはイミダゾールジペプチドが200mg含有していて,西友では国産鶏むね肉が100gあたり67円で売られているので,30日分の3kgでも2010円です.しかも美味しい.例の飲料は30mlで200mg含有しているそうで,商品のサイトでは1月分が30本で送料込みで6750円と価格は3倍以上です.
それと,体調不良を発祥したことによる部分除外がそれぞれの群で3例あることも引っかかります.実験は3ヶ月に及んでいますから,この間どなたかが風邪でも引いたのでしょう.とはいえ,このデータを除外してよいものでしょうか?体調が良い人というのは除外できないので実験が長期に及べば,薬効の効果を示すのに有利になってしまいます.
サンプルサイズがもっと大きい実験も論文になってるので,これから読んでみます.面白いことを見つけたらまた来週お話しするとして今週はここまで.
それでは,また.

追記:リンクがおかしかったので修正しました.
タグ:統計 JMP
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2018年08月25日

疲れる話

まだまだ暑い中でエアコンが故障してしまいまして,ダメ元でお願いしたら翌日には修理に来てくれたのですが,その晩は大変な目にあいました.寝不足でバテバテだったのですが,来ていただいた修理の方がわたし以上にお疲れの様子.聞いてみると,やはり今年の夏は大忙しのようで,その日も10件のお宅を回らなければばならないとか.冷却ガスのボンベを運ぶのも辛そうだったので,手伝ってあげたりしたのですが,あの様子では疲労のために作業効率も上がらないでしょうし,何かの事故に繋がらないかと心配してしまいました.
本日は疲労について考えてみます.何らかの作業・活動をシステムと捉えたとき,その出力として疲労あるいは疲労感が考えられます.あるいは倦怠感などと呼んでもいいでしょう.作業効率というもう一方の出力特性とのトレードオフとしてシステムの最適化を考えるならば,疲労を数値化する必要があります.まずは,Apple WatchやFitbitに代表される活動量計を使うことが思い浮かびます.加速度センサーで歩行やランニングなどの運動量を計測するわけです.この指標は簡便はありますが,どうも因果関係が逆のような気もします.活動するから疲労するわけなので.
ご存じない方も多いかもしれませんが,実は疲労度計なるものが存在します.自律神経の機能低下を計測するのですが,その原理は脈波という末梢血管の振動波形の計測で,脈波センサーをハンドルに組み込んでドライバーの体調急変を予測するなどという試みがなされています.疲労計測にはロー波形を微分処理した加速度脈波を周波数解析し,その低周波成分と高周波成分との比を指標にします.その比を性別や年齢などで構成されたルックアップテーブルによって疲労度に変換します.わたしはまだ試したことはないので,一度計測してもらいたいと思っています.Apple Watchに実装されたら面白いですね.疲れてきたようだから少し休もうだとか.
疲労のバイオマーカーもいろいろと研究されていて,唾液中のヘルペスウイルス(HHV)の活性度を計測するという手法が開発されています.HHVは水疱瘡の原因ウイルスとしてご存じの方も多いと思いますが,治癒しても死滅せずに末梢神経に潜伏していることが知られています.宿主が疲労やストレスにさらされたりすると,宿主に見切りをつけて脱出を試みようと再活性化するという仕組みを使ったマーカーです.因みに再活性化があるラインを超えると帯状疱疹として発病するわけです.
疲労とか味覚とかをシステムの出力と考える際に難しいのは,人間には主観があるということです.上述した手法は,客観的に疲労を計測するものです.人間の精神力というのは侮れないもので疲労していても気が張り詰めているとそのことに気づきません.それだからこそ過労死なども問題になってくるわけです.信長に焼き討ちにあって焼死した快川紹喜は心頭滅却新すれば火もまた涼し」と辞世を残しました.信長もその2ヶ月後に炎に囲まれてそのわけですが,そのときこの辞世が彼に届いていたかは興味深いところです.(これは紹喜のオリジナルではなく,もともとは唐代の詩から採った臨済宗の公案だったようです.)
 そこで,疲労の主観的な数値化もなされています.チャルダースケールが世界的に使われています.14項目の質問の0から3の点数をつけるというよくある質問票による指標です.ただ,チャルダースケールはここ最近の疲れ具合を示すものですから,今どれだけ疲れているのかを示す疲労スケールも開発されています.大阪市立大学の研究グループは心身の疲労を総合的に数値化する指標を開発していますが,これの問題は100項目以上に及ぶのでそれだけで疲れてしまうということでしょうか.これらは社会心理学の研究を目的とされていますが,臨床ではもっと簡易な指標が必要になります.それがVAS(Visual Analogue Scale)です.臨床では痛みの測定尺度として簡易でしかも感度が高いという理由で世界共通の尺度となっています.(例えば,聖泉看護学研究  Seisen J. Nurs. Stud., Vol. 4. pp.83-90, 2015(疼痛アセスメントにおけるVisual Analogue Scale:VAS 使用に関する文献レビュー)PDFがダウンロードされますのでご注意ください.)これを疲労の評価に適用しようという試みで,日本疲労学会というのがあって,そこに疲労感VAS検査方法(いきなりPDFがダウンロードされるのでURLは載せませんが,TOPにリンクが貼ってあります)が掲載されています.ラインの人員配置の効率化(オペレータの疲労を勘案した本当の意味での)などに適用できるかもしれません.
わたしも本日は猛暑が戻ってきて疲れたのでここまでにしておきます.それではまた.

この記事を書くにあたっては渡辺・水野(2018)『疲労と回復の科学』日刊工業新聞社,が参考になりました.
タグ:問題解決
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2018年08月18日

フォローアップセミナーのフォローアップ

先日のフォローアップセミナーには,暑い中での開催にも関わらず多くの方に参加して頂きました.この場であらためて感謝いたします.今回は読者限定セミナーという性格から先着順にはしたくなかったので,SAS社の営業さんから開催案内をしてもらうことにしました.このためか,蓋を開けてみれば予想よりも業界が偏ってしまいました.今後,同じセミナーを別の分野の皆さん対象に広げていく予定ですので,その機会があればぜひおいで下さい.それと第5講を対象とした今回の続きのセミナーは必ずやります.今度はもっとゆっくり時間を掛けて,懇親会の場で公開事例相談などをやるという案も出ていますので,実現したらお互い有意義なイベントになりそうです.
セミナー後に,当日使用したファイルを社内で配布してもよいかというお問い合わせをいただきましたが,本書購入者限定で(面倒おかけして恐縮ですが)個々にオーム社のサイトからダウンロードして頂くというサポートファイルと同じ扱いでお願いいたします.但し,第3講で使用したファイルは,当日お話ししたように没原稿のためのファイルなのでどこにもアップロードされていません.そこで今回のセミナーに参加できなかった方でご希望の方は連絡していただければ直接ファイルをお送りします.
当日使用したパワーポイントファイルを復習のために配布してほしいというお問い合わせもいただきました.本書のフォローアップセミナーということでテキスト持参で参加していただいているので,そもそも配布を資料はないはずだったのです.ところが,前日になって急遽,本書のドラフト段階で没にした内容をお話ししようと思い立ち,結果として第3講では配布資料を用意したほうが良かったかもしれません.とはいえ,私がセミナーで使っているスライドはAppleのKeynoteで作成しているので,そもそもMacユーザーでなければ開くことはできませんし,クラウド上で作業している関係で,私のMacでなければ開ないように暗号化されているのでそのまま配布しても役に立ちません.復習したいというかたがいらっしゃいましたら,コメントでお知らせください,何らかの方法を検討します.
ただ,当日の資料そのものは既に消去してしまっています.わたしはこのようなセミナーは一期一会のものであるべきと考えていて,資料の使い回しはできるだけしないようにしています.もちろん,一から作成するというわけではなく,ストックしているスライドから受講者の顔を思い浮かべてそれに見合うスライドを選択して,一つにまとめてから加筆・修正を加えています.そもそもパワーポイントが使いこなせない性質なので,いろいろと工夫して今のような流儀に落ち着きました.パワーポイントについてはいろいろと思うところあり,やはり没にした原稿の「ひとやすみ」にも書いた記憶があるので,そのうちブログに掲載します.
さて,セミナー講師の経験からわかるのですが,今回のセミナーでは皆様熱心に聞いてくださりました.一澤帆布のことをお話しした際に女性の方だったと思うのですが,「いい言葉だな」という感想を言ってくださったことが嬉しかったです.この場で改めて紹介しますが,一澤帆布というのは京都の有名な帆布鞄の老舗で,そこのHPに「私たちの工房には製造マニュアルがありません。製造マニュアルに頼ると、人の知恵と工夫が生まれないからです。」と書かれているのです.実戦ではマニュアルは役に立たないどころか,技術者の熱意をスポイルするというわたしの考えに合致するものです.
本書では「問題解決の手引き」と称したこともあって(注意深く抽象的には書きましたけれど)問題解決のマニュアル的な捉えたかをする人もいるので,この点はフォローアップセミナーではぜひ強調しようと思っていました.斉藤一の言葉も紹介しました.斎藤一をご存知の方が何名かいらっしゃいましたが,新選組の三番組組長で剣の腕は沖田総司と双璧をなし,永倉新八をして「斎藤は無敵の剣」と語らしめたという人物です.明治政府の人材の薄さ故か懐の広さ故かはわかりませんが,かつての仇とはいえ彼は後年警視庁で警部にまで重用されるのですが,真剣での斬り合いで語ったと言う言葉が残っています.「どうもこの真剣での斬り合いというものは,敵がこう斬りこんで来たら,それをこう払っておいて,そのすきにこう斬りこんで行くなどという事は出来るものではなく,夢中になって斬り合うのです.」司馬遼太郎の新撰組血風録が好きなわたしのセミナーではよく近藤勇などが出てきます.
誤解の無いように補足しますとマニュアルがダメだ不要だと言っているわけでは無いのです.マニュアルはその背後にある考えを理解せずに使うべきでは無いという意見です.また,背後にある考えを理解しないうちはマニュアルは書くべきでは無いということです.この話は後日することにして,本日はここまで.それでは.