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2018年06月16日

シンギュラリティなるもの

今の時期はいろいろな会社のカンファレンスが目白押しで,先日もIBMの統合イベントに参加してきました.去年まではクラウド系のイベントとWatson Summitという別のイベントを分散して開催していました.クラウドあってのWatsonで参加者も被るでしょうから自然な流れとはいえます.私自身はクラウドでシステムを構築するような仕事はしませんが,コンサルテーションでときどきこういった知識が必要になることもあります.前日にはデベロッパー向けのイベントも開催されて,私もその端くれとして参加しました.IBMはデベロッパーを育て,スタートアップ企業を支援する懐の深い会社と毎度のように感心します.今年はこれらのイベントを「Think」というキーワードのもとに一つに統合しました.
Thinkと言えばIBMがThinkPadをレノボに売却したのが2005年,あのときから今のクラウドの時代を見据えていたとすれば,先を予測することがいかに重要性なのかがわかります.とはいえ,7年間にわたって米IBMと一緒に仕事していたわたしにとって,昔のIBMが変わっていくのは寂しい気もしています.少し前に当時の同僚というかルームメイト(あちらでは執務環境として個室あるいは2人部屋が与えられていました.)と連絡とりあったら,彼はもう半導体には関わっていないでIT関連のマネージャーをやっているとのことでした.
少し前にBOXのイベントもあってそちらにも参加してきたのですが,そこにIBMが出展していたので「呉越同舟」なのではとも思いましたが,聞けばIBMはプライベートクラウドとパブリッククラウドとをわけて考えていて,それらを統合したハイブリッドクラウドが自社の強みと考えているようです.確かに大企業では既にクラウド上で構築したシステムが稼働しているでしょうし,セキュリティ面でも現実的なソリューションだと思います.
基調講演はこの4月に社長になったばかりのエリー・キーナンさんからスタートしました.前のポール与那嶺さんは米国籍の日系三世とのことで日英語ネィティブなので流暢な日本語で話されていましたが,キーナンさんは英語です.とはいえ大変聞きやすい英語で,しかも話し方がうまいですね.その後に登壇した某日本企業の講演が原稿を読んでいたのに比べると対照的でした.BOXのCEO兼共同創業者のアーロン・レビーさんの講演も自分の言葉で話していることがよくわかりました.何よりもお二人のスピーチは勢いがありました.これに比べると,日本人の講演はリズムが感じられません.自らの話し方についても反省するところあります.
セッションの講演内容はここでお話しするには少しズレているのでやめておきますが,一つだけ言及しておきます.電気通信大学大学院 人工知能先端研究センターの坂本真樹先生の「AIの進化・ビッグデータ活用がもたらす近未来予想」に興味があり,会場もキャンセル待ちが出るほど人気だったのですが,一般人向けの市民大学講座というような内容で,あのイベントにくるレベルの人には少し物足りない内容でした.第3次AIブームとかはどうでもいいので,ご自身が研究されている「感性」に関するお話を中心にして下さったほうが面白かったと思います.気になったことが一つ.シンギュラリティを説明するくだりで,AIが人間を超えるとかAIによって職を失うとかの危機感をあおるマスコミ論調が垣間見えたことが気になりました.
シンギュラリティは特異点ですが,この文脈で使うシンギュラリティはレイ・カーツワイルが使いだしました.この人,神出鬼没というか得体のしれない天才です.その昔,わたしが入社して初めてのボーナス(+α)で買ったのがKurzweilという電子ピアノでした.Kurzweilはカーツウェルと呼ばれていたので最近まで気付かなかったのですが,Wikiによればなんでもカーツワイルさんがスティービー・ワンダーに乞われてKurzweilの電子ピアノを開発したのだそうです.YAMAHAやRoland,KORGでなく,なぜこのメーカーのものにしたかと言うと,圧倒的にピアノの音質が良く,しかも鍵盤のタッチが生ピアノに大変近かったからです.このKurzweilが故障して修理してくれたサービスマンにMacintoshを勧められて,それ故にJMPユーザーになって今に至るということを思い起こせば,カーツワイルさんがいらっしゃらなければこのブログを書いていることもなかったかもしれません.
私は自分のセミナーでもAIの話をすることがありますが,そこでシンギュラリティの話は避けて通れません.そこではシンギュラリティ(技術的特異点)とはAIが人間の知能を超える時点(2045年とされています)であるというマスコミの論調は間違いであること,正しくは人類の能力が無限大になる(特異点)であって,それにより生物的進化速度を技術(AI)で加速することなのだと言っています.著作をよむと彼は非常にオプチミストとわかりますから,AIは人類に明るい未来をもたらすものであって脅威にはなり得ないとお考えでしょう.Ray Kurzweil(2005),The Singularity Is Nearにはシンギュラリティ以降の世界として,脳のスキャンによるデジタル化とかナノボットで臓器が不要になるとか現時点ではSFの技術が出てきますが,五感全てを組み込んだ完全没入型のVRというのは最近ではSFとも言えないようになってきました.人間は騙すのは簡単ですから.
人間とAIの競争という点で言えば,人間がAIに囲碁で負けたと聞いて驚いても,人間がF1マシンに100m走で負けたと聞いて驚きますか?という点につきます.いわば負けるのが当たり前と思います.但し,消費電力は人間の脳が20WでGoogleのアルファ碁が25万Wといいますから,単位電力当たりでは間違いなく人間の勝ちです.最近はボタン電池で稼働する低消費電力マイコンなどもありますが,20Wでは一手指すのにどれくらい時間がかかるのか.名人戦のリーグ戦では5時間ある持ち時間もNHK杯戦では「なし」ですから.AIが電気的なスイッチでなく,人間の脳のような化学的スイッチを採用したコンピューターに実装されれば,そこらへんも変わってくるかもしれません.けれどこのときは,人間並みの遅さになるように予想します.もちろん,今の人間の脳が最適解というわけではないのですが..
私のセミナーでは,シンギュラリティにはじまって強いAI(あるいはAGI)へと展開し,今の時代の技術者はどうあるべきかをお話ししているのですが,今日は時間になったので,そのうちここで書こうと思います.
本日は完全に無駄話でした.それでは,また.
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2018年03月11日

アメリア・イアハート効果

昨日の続きです.パラメータ設計において「アメリア・イアハート効果」を関連付けるとすれば,多特性の最適解にはならなくても単特性の最適解にはなり得る解があって,それらの解にも価値があるということではないでしょうか.ちょっと事情があって英語環境からの説明になって申し訳ないのですが,このような解を求めるには,Profilerの赤三角から「Optimization and Desirability>Set Desirability」で「Response Goal」の設定ウィンドウを出して一番上のプルダウンから所望の特性以外のGoalを「None」にします.(すいません,日本語での表記はうろ覚えなので,英語のままにしています.)ここのインターフェイスが前からわかりにくいと思っているので少し説明します.
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この例でY1だけの最適化をしたい場合は残すとすると,『OK』でY1はスルーして→プルダウンからNoneを選択→『OK』→ プルダウンからNoneを選択→『OK』という手順となります.それから最適化を実行すればY1だけの最適解が得られることになります.
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多目的最適化でなければならないような事例であっても,それぞれの単特性の最適化を独立に実施してみてください.それは人と同じことをやらずに,狭くてもその世界での一番を見つけるようなものです.例えば,Y1単独の最適解の意味するところはY2,Y3の制約がなければそのシステムはY1に関する限りはそこまではいけるということです.そのシステムのY1についての可能性とも言えます.この情報を得た後に他の特性の制約を一つ一つ(すべての組み合わせで)解除していくことで,どの特性がY1の可能性を妨げているのかがわかります.いわゆるトレードオフの関係が把握しやすくなります.
とはいえ,それぞれの単特性の解は尖った解です.システムとして全体のバランスに欠けているのでそれらは安定した解ではなく,アインシュタインの言葉でいうところの幸せな解ではありません.幸せな解を見出すにはすべての特性を最適化に組み入れた多目的最適化によるべきであることは言うまでもありませんが,JMPのような計算機支援最適化ではこのとき注意があります.
それは品質工学でやるような二段階設計では真の最適解が得られない可能性があるということです.二段階設計とは具体的に言うと,Y1単独の最適解を踏まえて部分的に設計因子を固定し,その状態で別の特性の最適化を実施するという設計手法のことです.基本的にコンピュータによらず,SN比と感度という比較的単純な特性の最適化である品質工学においては,二段階設計は有効な手法なのかもしれませんが,私たちのようにもっと精度の高い(複雑な交互作用を扱う)統計モデルに基づく最適化では真の最適解にたどり着けないこともあり得ます.JMPによる多目的最適化では必ず,すべての設計因子をフリーにして同時に最適化するように心がけてください.
以上まとめますと,ステップ1として,多目的最適化では個々の特性を単独で最適化すること.優先順位の高い特性から始めると良いでしょう.その際,最大化したい特性であっても,最大化だけでなく最小化も実施します.ですから最適化という言葉は正確ではなくて,その特性に対するシステムの可能性を把握すると言ったほうが正確かもしれません.次のステップとして,優先順位に従って別の特性を最適化に加えていきます.優先順位が同位の特性がある場合は,すべての組み合わせで実施することが望ましいです.締めくくりのステップ3で,すべての特性を同時に最適化します. 
なぜ最初からステップ3を実施してはいけないかというと,JMPの満足度の最大化では,すべての応答空間を網羅して満足度を計算しているわけではないので,たまに局所最適解に陥ってしまう場合があり,そのような状況であることを見抜くためです.更には,最適解が見つからなかった場合,特に望目最適化であれば,目標値をほんの僅かずらすだけで準最適解とでも呼べるような解が見つかる可能性を探るためです.特にJMPの望目最適化はピンポイントでしか目標値が設定できないのでそのような状況になっている可能性は十分あります.
この状況では,本書にダウンロードバンドルしたMCDAアドインが大変有効です.JMP単独ではできない最適化ができるMCDAアドインについては本書では書ききれなかったのですが,文字だけでの説明では困難なので,SAS社のご厚意でゼミを開催する予定にしています.実施日等の詳細は未定ですが,MCDAアドインを使いこなしたいという方はぜひおいで下さい.
というわけで,JMPで最適化する際は,伝説の女性パイロットのエアハートのことを思い出してくださいね.
それでは,強引に落ちをつけたところでまた.

3/12追記
発音としてはエアハートだとしても日本語の用語としては「アメリア・イアハート効果」が正しいので本文を修正しました.
タグ:問題解決 JMP
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2018年03月10日

女性パイロットとパラメータ設計

以前からブログに書こうと思っていたことがあるのですが,いざ書き始めるといろいろと深く考え込んでしまうこと多々あるので,本日は全くの雑談に変更しました.といっても,何を書くかは決まっているわけではないので,昨日のニュースに目を通しながら思案を巡らせています.このブログは自分へのチャレンジとして続けていると言う側面もあるので,何か題材を探す必要があります.目に止まったのが次の記事です.
島で発見の人骨、女性飛行士イアハートの可能性高い 研究成果
太平洋離島で発見の人骨、A・イアハートのものか 米研究
なぜか日本ではイアハートと呼ばれるエアハートという有名なパイロットの失踪の謎が判明しそうだとのことです.パイロットといってもリンドバーグの時代の人で1928年に大西洋横断無着陸飛行に成功しました.日本での知名度はリンドバーグほどは高くないと思いますが,米国では誰もが知っている「あの伝説の」と冠がつくほどに人気が高い有名人物でした.
いまウィキペディアをみたところでは,やはり「エアハート」が言語の表記に近いとあります.日本語のカタカナを英語風に発音しても全く通じないと言う経験を何度もしている私ですが,余計なお世話といわれようと少なくとも人名と地名だけは原語の発音を真似した方が無難です.エアハートという文字であれば見ればわかりますけれど,イントネーションも重要です.2015年のSUMMITで来日されたWilliams CollegeのRichard D. De Veaux(デ・ヴォー)先生とお話しした際.大学がマサチューセッツ州にあるので,彼の地での実験的営みの日々の回想録として有名な『森の生活』 のことを話題にしようとしました.当時は原題を知らなかったので(今調べたら単純に”LIFE IN THE WOODS”でした.),「ソローが書いた本」と言ってもこれが伝わらないのです.本の内容を話し出すと,「あ,ソローね.」とようやくわかって頂けたのでした.このように書いてもよくわかりませんが,原語ではソローのローがあがるイントネーションで発音するということがポイントです.あまりにも日本語化してしまっているものは仕方ないですけれど,知っているならば日本でも嫌味にならない程度に(これが重要),原語発音に近い表記を心がけるべきと考えています.
とはいえ,英語化してしまった変な発音もあるので注意が必要です.例えば,J.S.BachのCDを買いにいって全く通じなかったことがあります.自分で見つけて店員に見せたら「ああ,バックのことね.」とか.ウルトラマンはアルトラマンだったり,ワコムのタブレットが通じなくて,それはワイコムと読むんだよと教えてもらったり?
話が逸れました.エアハートですが,日本の捕虜になって亡くなったという説があります.興味がある方は,例えば,こちらとかこちらをご覧ください.旧日本軍がアメリカの英雄しかも女性を捕虜にして殺したとかの説は彼女の人気にあやかろうとした志の低いメディアのなせるものとはいえ,証拠がないのでいつまでも亡霊のように付き纏ってくるのです.イエスの墓は青森県にあるとか,源義経がモンゴルに渡ってチンギス・ハーンになったとかの類と一緒です.
あまり知られていないと思いますが,マーケティングでは「アメリア・イアハート効果」と言われている言葉があります.その分野で一番になれなくても,見方をかえれば一番なので,それをマーケティングに使うということです.楽天などでも,とても細かいカテゴリー内でランキング1位とうたっていて何か意味があるのかと思っていましたが,あれが「アメリア・イアハート効果」を使った手法なのですしょうか.
確かにエアハートはリンドバーグに最初の大西洋横断で先を越されたとはいえ,女性としては世界初であったために今の世に名を残しているともいえます.一番になるには層別化を進めていけばよいということですが,果たしてそうなのでしょうか.エアハートは,”Never do things others can do and will do if there are things others cannot do or will not do.”と言う言葉も残しています.最初から一番になることを目指していたのではなく,誰もできないこと,やらないことをやっていたら一番になっていた,ということなのです.ですから,「アメリア・イアハート効果」のマーケティング分野での使われ方は,彼女に対する誤解を招くもののように感じます.彼女の人生においては一番になることが目的だったのではなくて,単なる結果に過ぎなかったのでしょう.エアハートが今の世に名を残しているのは,39歳の若さでそれこそ大空に散った伝説のヒロインということに加え,女性の地位向上に尽くした貢献によるところが大きいのです.
日常的に万年筆を使っているものとして,常々万年筆にも興味を持っているのですが,限定品の高級万年筆を専業とすることで有名なKrone(クローネ)にもエアハートの名を冠した美しい万年筆があります.クローネの万年筆はとにかく高価で,例えばアルベルト・アインシュタイン万年筆などは,アインシュタイン直筆の原稿を裁断した紙片が埋め込まれているとかで値段は,ebayで今みたら$7425もしています.
アインシュタインといえば,去年日本滞在中のメモがオークションで1億円を超える価格で落札されたというニュースがありました.
直筆メモは2枚あって,そのうちの一枚には英語に訳すと“a quiet and modest life brings more joy than a pursuit of success bound with constant unrest.”と書かれています.日本語では「静かで謙虚な人生は成功を追い求めて常に不安に脅かされるよりも幸せである.」というような意味でしょうか.この格言がアインシュタインのオリジナルであるか否かは不明ですが,一番を目指すことは必ずしも幸福には繋がらないということを教えてくれています.
エアハートとアインシュタインの言葉を(無理やり)統合すると,人がやらない(やれない,やりたがらない)ことをやれば,その結果一番になれるかもしれないし,一番になれなくてもそれもまた幸福なものだ.というようなことでしょうか.
さて,ここで落ちをつけなければなりません.エアハート,アインシュタインときて,以下でそれらを強引にタイトルにあるパラメータ設計に結びつけようと思いますが,本日はこれから外出しなければならないので,続きはまた明日とさせてください.
それではまた明日.
タグ:問題解決
posted by Tad at 13:14| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記