UA-115498173-1

2018年06月23日

トポロジー最適化

質問を受けたので今日はその話をします.こういった最適化がJMPで出来ますか?という質問です.リンクを踏みたくないという方のためにどういうものか説明しますと,CAEで実現した最低限の体積で最大の強度が出るような構造を持った機械部品で有機的なメッシュで構成されている,と言えばお分かりでしょうか.この手の工業製品を最近よく見かけるようになりました.これは構造最適化手法の一つのトポロジー最適化によるものです.原理は単純で基本形状からスタートしてそれにボクセルを付け加えたり削除したりしてその度に特性(重量と強度)を計算します.材料の分布を最適化すると考えるとわかりやすいかもしれません.当然ながら有限要素法によるシミュレーションソフトのようなソルバーとの連成が前提です.無数の繰り返し計算を必要とする計算負荷の大きい最適化です.腕力で最適化を達成するとはいえ,数値不安定現象(例えば,チェッカーボード現象といって材料が格子のように並んでしまう解が出てきたりします.)を如何に回避するかなど多くの研究がなされています.
この最適化では,構造が位相同値であることを前提としません.考え得る全ての構造が最適化の対象になります.ここで位相というのはトポロジーのことです.例えば,円板と円環はトポロジー的に異なる構造です.ですから,このような無数の穴が開いた構造も最適解になりうるわけです.上のリンクにある三次元構造は,強度と重量の多目的最適化の解になっているわけですが,従来の人間界では特異な形状かも知れません.とはいえ,自然界では普通にみられる構造です.これを書いていて思い出しましたが,この部品はアントニオ・ガウディのサクラダ・ファミリアを彷彿させますね.構造は自然から学ぶべきだとしたガウディの建築物とトポロジー最適化は同根であったわけですね.リソースの節約が基本的な戦略である生命の形態を顧みれば,自然界でこのような構造は合理的です.人間の吠骨も顕微鏡で拡大すれば複雑なネットワークを構成していますし,有孔虫という原生動物の殻を顕微鏡で見ると同様な構造が観察できるそうです.サンゴ礁の砂はこのような生物の脱け殻だということで,九州大学大学院の菅先生のHPに電子顕微鏡の写真が掲載されています.
トポロジー最適化は以前から知られていた手法でしたが,この手の構造物を最近よく見かけるようになったのは,PCやCAEソフトの高性能化に加えて,近年3Dプリンターの技術が格段に進歩したからです.今までは最適構造だとわかっていてもそれを実際に作るのが困難であったため,絵に描いた餅だったものがどんどん現実のものとなってきているのが現状です.例えば,ここに昨日まで開催されていた設計・製造ソリューション展の2015年(DMS2015)のレポートがあります.(私も毎年参加していたのでしが,今年は忙しくて行けませんでした.)この記事の最後の方にオートデスクがトポロジー最適化で作った椅子が紹介されています.おそらく,安定性や重量と強度などを多目的最適化したのでしょう.とはいえ,椅子であれば見た目や掃除のし易さなども重要な因子ですし,座りごごちなども忘れててはならないので,実用的な最適化とは言えないでしょう.工業製品の場合は修理も考えなければならないので,有機的な構造は不利です.とはいえ,今後はこれらの制約がないものには見た目はギョッとする構造が増えていくかもしれません.
前置きが長くなりましたが,JMPでトポロジー最適化ができますかという質問に戻ります.答えを先に言うと,上の椅子のような構造の最適化はできませんが,もっと単純な問題であれば工夫をすればそれらしきことはできます.最初に,最適化には三つの種類があることをリマインドしておきます.寸法最適化,形状最適化そしてトポロジー最適化です.形状最適化には少し説明が必要で,形状を最適化していれば形状最適化というわけではないのです.形状をいくつかの寸法で表現した場合,それは形状最適化ではなく寸法最適化で形状を最適化したというだけなのです.
寸法最適化の場合,標準形状を(非等方的に)アフィン変換(拡大,縮小,回転などの変形)した形状の中に最適解を探すイメージです.例えば,すり鉢様のコンタクトホールの形状を最適化するなどという場合,孔の上端,下端の直径及び深さという三つの寸法で規定される形状を最適化するだけならそれは寸法最適化に過ぎません.これに対し,位相同位体の中に最適解を探します.形状最適化では,孔の断面が例えば四角であったり深さ方向にボーイングしていたりといった複雑な構造の最適解もあり得るのです.これらの解は一定の寸法(群)では記述できません.
また,形状最適化の対象は風力発電の風車の羽根の断面ですとか,新幹線の形状などが多いので,流体や構造の重いシミュレーションを実施するソルバーと連成した環境で実施されることが多いです.トポロジー最適化では形状最適化における位相同値の制約を外すのです.即ち,ありとあらゆる構造の中から最適解を探します.当然ながら,ソルバー連成を前提とした手法です.そこで使われる最適化ロジックは,GA(Genetic Algorithm) 遺伝的アルゴリズムやSA(Simulated Annealing) 焼きなまし法などの手法です.JMPの満足度の最大化ではすでに応答関数が求まってから適用されるので,ソルバーと連成するということが基本的にできません.ですから,JMPで実施可能なのは寸法最適化とせいぜい一部の形状最適化どまりです.
しかしながら,限定したケースであれば,JMPを使った実験計画でもトポロジー最適化ができます.例えば,3x3のブロックで形成される二次元構造物を考えます.この構造物の総隣接ブロック数をY1,ブロック数をY2として,Y1を最大化,Y2を最小化する構造はどのようになるでしょうか.(但し,製造できるものに限ります.)寸法最適化であれば縦横の大きさをX1,X2のそれぞれ3水準で計画を立てればよいことはお分かりと思いますが,トポロジーが異なる穴あき形状は最適解としては得られません.本日は所用がありまして,続きは来週とさせていただきますが,それまでどのようにやったら良いか少し考えてみてください.
それでは,また.
タグ:Q&A JMP
posted by Tad at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | Q&A
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのトラックバックURL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/183614960
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。
※言及リンクのないトラックバックは受信されません。

この記事へのトラックバック