UA-115498173-1

2019年01月26日

文旦v.s.デコポン

本日は最近わたしが遊んでいることをJMPerの皆様にシェアしたいと思います.初心者にJMPを教えたりするときに面白がってもらえるので,皆さんも試してみてください.
きっかけは他愛のないことでした.自宅でカボスを育てているのですが,その近くに別の柑橘系の木があって何を植えたのか思い出せなかったのですが,今年初めて小さいのが三つほどですけれど,実がなったんです.熟したら収穫しようと思っていたのですが,色が薄いままだったので,おかしいなと首を傾げていました.多分デコポンだろうと思っていたのですが,オレンジ色が濃くならずレモンよりも薄いクリームイエローのような色のままです.これはおかしいと,先日ついに一つだけ収穫してみたのですが,持ってみると妙に軽い.腐ってしまったかと割ってみたところ,皮というか実と皮との間のわた状の部分が厚いのです.専門用語では中果皮(アルベド)と言います.これに対して,外側の皮は外果皮(フラベト)と呼びます.
このフラベトの厚さの割にアルベトが厚いのは文旦の特徴です.だから見かけよりは軽いんですね.文旦を植えた記憶はないのですが,匂いも文旦で間違いありません.文旦の割には実が小さいですけど,生育不良なのかもしれません.そこで文旦はどこで栽培されているのか調べようと思ったのですが,ただ検索するのは面白くないのでGoogleトレンドを使ってみました.
ご存知のようにGoogleトレンドはWEBコンテンツのクリエーターにとって必須のツールです.指定した期間での検索キーの推移を可視化できるのです.地域別のインタレストもわかるので「文旦」というキーワードがどの地域で多用されているのかを知ることができます.
全期間(2014年から現在)の「文旦」のキーワードの結果を見ると,なるほど,高知県が文旦の本場のようですね.ブラウザ上に日本地図で検索数の相対値(最大を100として)が濃淡で示されています.これだけですと面白くないので,「デコポン」というキーワードと比較してみたのがこちらの結果です.
せっかくなのでこのデータをJMPに持ってきて,可視化してみます.それには「地方で比較した内訳」のところの右上にある下向き矢印のアイコンをクリックしてCSVデータをダウンロードします.このCSVファイルをJMPで開いてグラフビルダーで作成したのが下の図です.デフォルトでは「国/地域」という列名になっている都道府県名を「地図シェープ」にドロップしてください.
105-1.png
105-2.png
ものの見事に文旦の高知県とデコポンの熊本県という勢力図になっていますね.ダッシュボードでサイドバイサイドに比較もしてみました.
105-3.png
因みに少しカラースキームが違いますが,こちらは「カボス」です.
105-4.png
やはりカボスは大分県ですが,よく見ると福井県にもカボスの検索数が多いのです.これはなぜだかわかりますか?調査の結果,福井県には勝木書店という企業があってWikiによれば,そこが「KaBoS」という書籍・文具に加えてCD、DVD、ゲームソフトなどを扱う新業態店舗も展開しているようです.面白い遊びを見つけたので,ここのところわたしは最近このやり方でそばv.s.うどんや吉田松陰v.s.宮沢賢治などを調べて遊んでます.そもそもデータをJMPに持ってきたのは検索数を人口で割る方が良いのではないかと考えたからで,今日は時間がなくてやってませんが,お時間ある方はぜひトライしてみてください.
それでは本日はこれで.

2019年01月19日

産業分野における実験計画の活用

来月のJMPer’s Meetingでお話しすることになりましたと先日リークしました.今週それが正式にアナウンスされたので,改めてこの場で紹介しようと思っていたのですが,先ほど見ましたら既にキャンセル待ちになっていました.因みに,こちらが申し込みフォームです.
2019年第1回 JMPer's Meeting 産業分野における実験計画の活用

Summit2018での講演の延長戦という趣旨なので,本来はもう一人別の講演者にご登壇いただくのが筋ですが,期が変わってからの方がご都合がよろしいとのことで,わたしが前座を務めることになりました.前座がこういうのもおかしいですが,多くの皆様にお越しいただけるのはありがたいことです.キャンセル待ちになってしまいましたが,もしも参加希望の方がいらっしゃいましたらコメントでお知らせください.講演者割り当て分があるので,おそらく数名くらいであればはなんとかできるのではないかと思います.

時間は90分いただいているので,何をお話しようかを今から考えているところです.事前に講演内容を聞かれたので,以下のようにお返事して,それがそのままプログラムに掲載されています.

「産業分野でなぜ実験計画が必須なのかをテーマとして、実践的な実験計画の基本的な考え方とそれを実施する具体的な手順についてお話しします。更に、技術開発に有効なパラメータ設計のためのJMPアドインについてデモを交えて紹介する予定です。」

ここで言っているJMPアドインとはMCDAアドインのことです.後半のジャパンセミコンダクターの坂本さんの講演を実践編として,そこで適用例を紹介するので,それに繋げるようにMCDAアドインの使い方について解説する予定にしています.時間の制約もあるのでどこまで踏み込めるかはわかりませんが,わたしの力及ばず本書だけではMCDAアドインの使いどころが今ひとつわからないという声も聞いているので,今回はこの点は頑張ってお話したいと思います.因みに,MCDAアドインは本書にバンドルして配布することを許可されているのですが,JMPer’Meeting参加者限定でも配布できるバージョンを検討しています.(来月なのでちょっと時間がないかもしれません.)
わたしの講演では実験計画の基本的な手順も合わせて解説します.あくまでも実践的な実験計画であって統計学の一分野の実験計画ではありませんし,具体的な手順にどこまで踏み込めるかは当日の雰囲気によります.
何れにせよ,今回のテーマはAI流行りの産業界に向けたアンチテーゼにあります.わかりやすく書くと,「AIによるビッグデータ分析で技術開発ができる」というテーゼに対して「(少なくともそれだけでは)できない」というのがわたしの主張です.この結果のアウフヘーベンとしてあるのが実験計画なのだという主張でもあります.これが,どういう意味なのかは講演でじっくりとお話します.
SAS社のご好意でネットワーキングと称したお茶会も開催していただけますので,ぜひ皆様とお会いしてお話できたらありがたいです.

本日は短いですが,ここまで.それではまた.
タグ:問題解決 JMP
posted by Tad at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | JMP

2019年01月12日

万年筆と最適化設計

実は最近アクセス記録を見てしまったので,このブログにも結構な人がいらしてくださることを自覚してしまいました.あまり迂闊なことも書けないなと思いを新たにしていますが,本日は暇ネタを書かせてください.
わたしは日常的に万年筆を使っています.他の筆記具ではどうにも書きにくいのです.滑らかだと定評のある水性ポールペン(ジェットストリームやアクロボール)でさえ,筆圧をかけなければ書けないので,長い時間書いているととても疲れます.ボールペンは構造上ペンの先の衝撃がダイレクトに手に伝わってくるのでそれも疲れる理由の一つです.そこで万年筆がわたしには疲れにくい筆記具なのです.
司法試験の筆記試験にも万年筆がよいということで,専用の万年筆が売られていたりします.何しろ数時間もの間ひたすら書き続ける過酷な試験ですから, 疲れない筆記具は必須のようです.そもそも法務省の司法試験に関するQ&Aにも,「指定の筆記具は黒インクのボールペン又は万年筆(ただし,インクがプラスチック製消しゴム等で消せないものに限る。)」とあります. 
この万年筆にも重要な多目的最適化がなされているのですが,本日はこの話をしたいと思います.万年筆のペンポイントの材質は何だかご存知でしょうか?メーカーのロゴと一緒に14kとか18kと小さく書かれているのを見たことがあるかもしれませんので金と思われているかもしれませんが,この文字が書かれている部分はペン先です.ニブとも言いますが,その先に小さい金属(球体)が溶接されていて,そこが紙にあたって書けるのです.この金属の球をペンポイントと言って,材質はイリドスミンというイリジウム(Ir)合金が一般的です.オスミウム(Os)共々硬い金属の代表です.何しろこの二つの元素は全元素中一番目と二番目に比重が大きいのです.イリジウムとオスミウムの天然合金をオスミリジウムと言い,その中の白金属元素鉱物の一つがイリドスミン(Rutheniridosmine) と呼ばれてペンポイントの材質として使われてきました.(因みに,白金属元素鉱物の命名に関する決まりが変更されて,イリドスミンは現在は自然オスミウムと呼ぶのが正式ですが,万年筆業界ではいまだにイリドスミンで通っています.)
ペンポイントに必要な特性はまず摩耗に強いこと,すなわち硬いことです.イリドスミンのモース硬度は6−7です.白金の硬度が4−4.5で,ガラスの硬度が5ですからかなり硬い合金です.国内でもイリドスミンの需要が高まった頃でしょうか,あの宮沢賢治が岩手県で砂金の中に入っている白い物質がイリドスミンであることを発見し,イリドスミンの採鉱を目指していたが叶わなかったということです.佐藤隆房(2012)「宮沢賢治ー素顔のわが友」,富山房企畫そういえば,宮沢賢治の詩集「春と修羅 第二集」の三六六に鉱染とネクタイという詩があります.「こゝらのまっくろな蛇紋岩にはイリドスミンがはいってゐるぞ」という一節があるのを思い出しました.
話が逸れました.このペンポイントですが,現在では必ずしもイリジウムとは限らないそうです.その材質は企業機密とのことですが,成分は分析すれば簡単にわかることなので製法などにも色々ノウハウがあるのかもしれません.何れにしてもペンポイントの硬度が高ければそれだけ摩耗に強いということで,長持ちする万年筆になります.(もちろんペン先の交換は可能ですが,凝った軸でもない限りおそらく買い換えた方が安いです.)その長持ちするペン先のトレードオフにあるのが書き味です.
万年筆の使い始めはペンポイントがまだ尖っていて,その部分が紙を引っ掻くことで,インクが滲み字幅が太くなっています.この時点ではまだ書き味も悪く,こんなものかと使うのをやめてしまう初心者もいます.ですが,我慢して使い続けているうちに角がとれ,自分の書き癖に馴染んだ形状にペンポイントが摩耗していきます.この時点で一番細く書けるペンポイントになります.更に書き続けていくと,徐々に摩耗が進み字幅は太くなっていきます.
字幅が太くなると,一定のインク容量あたりの書ける線の長さが短くなります.この線の長さを一定の字の数で換算したものを字数曲線と呼ぶんだそうです.横軸に時間,縦軸に字数で万年筆の特性を表現できるわけです.この字数曲線は上に凸の関数になっていてその頂点の近傍で万年筆(のペン先)は線幅が最も細くなり書き味もこなれてくることになります.
万年筆メーカーによってこの頂点をどの時点に設計するかがとても重要です.日本の万年筆メーカーは実用性を優先して硬いペンポイントになっているので,万年筆がこなれてくるまでに時間がかかります.ハードに使っても半年はかかるでしょうか.通常使用であれば,おそらく数年はかかります.一方,外国メーカーではもっと柔らかいペンポイントが付いているように思います.最初からユーザーに優しい万年筆なのです.しかしながら.末長く良い状態を保てるのは国産の万年筆です.しかも,国産メーカーのペン先はロバストです.外国製のように当たり外れがほとんどありません.性能として優秀な国産万年筆ですが,それが売り上げに結びついているとは言いがたい状況です.それはなぜかというと新品時の書き味で購入評価をされてしまうからです.
文房具屋に万年筆を買いに行くと,試筆に新品を出してくるお店がありますが,そういうお店ではどうしても外国メーカーの万年筆が好まれるようです.何しろ最初から書き味が良いのですから.大きいお店では,パイロットやセーラーの試し書き専用の万年筆がありますが,それらは何ともこなれたいい書き味になっていたりします.国産メーカーも最初から柔らかいペンポイントの万年筆を出せばいいとは思うのですけど.国産万年筆のペンポイントが硬いのは,漢字を書くための細い線幅にはペンポイントを小さくする必要があり,摩耗もそれだけ大きくなるからではないかと考えています.
耐久性(耐摩耗性)と書き心地の二つの特性を最適化した製品が万年筆であって,国内外の多くの万年筆メーカーのそれぞれの製品がその最適解の一つなのです.このように,製品には複数の特性があるのが普通です.ぜひ皆さんの製品にも複数の特性を見出してみてください.今まで見えなかったユーザーのニーズが見えてくるはずです.
本日は暇ネタですいません.
それではまた.
タグ:問題解決
posted by Tad at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記