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2018年05月05日

常識を疑う(追記あり)

追記
数式の修正に漏れがありました.下記でsとあるのは全てsの二乗に読み替えてください.定義の問題と逃げることもできますが,通常sは標準偏差を意味するので,ここは正直に間違えましたと白状します.前回の記事にも修正をいれておきました.この公式は覚える必要もない類のものなので,混乱させてしまったら申し訳ないです.JMPを使うならば導出できなくても全く問題ない類の数式ということも改めてお伝えしておきます.
追記ここまで

先週の投稿で数式にタイプミスがありました.明らかな添字の間違いに気づかず申し訳ございませんでした.ブログのコメントで指摘して頂いたのですが,ちゃんと数式にまで目を通していただいたことに感謝します.さっそく修正しておきました.承認しないでよいとのことでしたので,頂いたコメントは公開しませんが,コメントで指摘してくださった方,どうもありがとうございました.
コメントとしてときどき質問は頂くので,ここに誰も来ていないとは思ってはいませんでしたが,わざわざブログ記事を読んでいる人がいるのだろうかと,ときどき思っていたところなので素直に嬉しいです.書籍のサポートブログとして開設して,一年は何らかの投稿を続けようと思っていましたが,ネタが続く限り,読んでくださる人がいるならば続けようと思いをあらたにしました.幸いネタはどんどん増えていっているくらいなので,今のペースであればなんとかなりそうです.そういえば去年の今頃は「統計的問題解決入門」の執筆中でした.あのときと同じく,鶯の鳴き声が今もしています.
ということで,MathTypeを起動したついでに今週のネタを変更して,先週の数式について少し説明を加えます.(以下では先週定義した記号を使いまわします.)例にあげたのは二つのサンプルの平均の差の標準誤差についての公式でした.(この式にタイプミスがあったわけです.)
F1.png
平方根内の右側については先週の説明でわかると思うので,左側を導出します.即ち,2サンプル共通の不偏分散σ^2が次式で示されることを証明します.プレビューを見て気づいたのですが,以下の数式では画像の解像度を低くしてしまったようで読みにくくてすいません.
2.png
ここで,2サンプルをまとめて1つのサンプルとみなしたときの平方和SSを考えると,σ^2は次式で表せます.
3.png
ここでSSはサンプル1の平方和SS1とサンプル2の平方和SS2を合わせたものですから
4.png
となることは容易にわかるでしょう.SS1は次式のようにサンプル1の標本分散s1をN1倍したものであることが証明できます.
5.png
SS2も同様なので,SSは次のようになり,これで最初の式が証明できました.
6.png
母分散の不偏推定量として不偏分散をサンプルサイズから1引いた数で割ったものと覚えているだけでは,上記の証明で2サンプル共通の平方和と不偏分散との関係を理解するのが難しいかもしれません.ここでは自由度という概念を境にしたフレームワークが存在します.
このフレームワークを意識するということは常に心掛けています.例えば,数式が初見でフォローできない場合には,まずフレームワークに照らし合わせ,それを超える必要があるかを自らに問うことにしています.そしてフレームワーク内にあると考えたならば徹底的に突き詰めますが,それがフレームワーク外であればまずは素直に受け入れることにしています.
数式ならばそれでいいけれど,疑問と一緒にしていいのかと質問されたことがあります.たしかに,Feynman先生の教えとして「持ってよい疑問」と「持ってはいけない疑問」とがある,ということについてお話ししていて,字面を読むだけではミスリーディングを誘うかもしれません.PHPサイエンス・ワールド新書という新書シリーズがあるのですが,その表紙にEinsteinの言葉というかQuoteが書かれています.”The important thing is not stop questioning.”
このEinsteinの言葉は,自らのフレームワーク内で常に疑問を問い続けよと限定してとらえるよりも,フレームワーク外に疑問を見出してその疑問をいつの日か解明する志を抱けというメッセージとして捉えたほうがロマンがあります.一見するとFeynman先生の言葉と矛盾するようにも思えますが,わたしがFeynman先生の言葉を引いたのは,問題解決の場という学習のコストを意識しなければならない状況を意識してのことです.学習のコストという意味では独学する場合も似たような状況がある考えています.
山口周,『知的戦闘力を高める独学の技法』,ダイヤモンド社というビジネス書があります.書かれている内容がやや抽象的で,参照している例に?なこと(ベートーベンがモーツァルトの弟子だったと断言していたりとか)が多々あり,書籍そのものはお薦めするか迷うところですが,イノベーションについて良いことを言われています.(そもそもこの著者はよい本を書くお方なので,本書では同じエピソードが二度出て来たりして,編集が雑という感じです.)

以下引用
ここに、よく言われる「常識を疑え」という陳腐なメッセージのアサハカさがあります。イノベーションに関する論考によく見られる「常識を捨てろ」とか「常識を疑え」とかいった安易な指摘には「なぜ世の中に常識というものが生まれ、それが根強く動かし難いものになっているのか」という論点についての洞察がまったく欠けています。「常識を疑う」という行為には実はコストがかかるのです。(中略)重要なのは、よく言われるような「常識を疑う」という態度を身につけることではなく、「見送っていい常識」と「疑うべき常識」を見極める選球眼を持つということです。
引用ここまで

わたしが言いたかったのはまさにこのことです.「常識を疑え」という陳腐なメッセージのアサハカさとまで言っていただいたのは痛快でした.私のことばで言い換えると,「常識」にはフレームワーク内のものと外のものがあって,両者を混同してはいけない.疑っていいのはあくまでもフレームワーク内の「常識」であって,そのためにはフレームワークがどこにあるかを意識する力が必要である,ということです.その力をどうやって養うのかについてはまた別の日に.
それでは,また.
posted by Tad at 19:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 統計的問題解決