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2018年01月13日

品質工学とパラメータ設計

今週は大雪の降る金沢にいっていました.以前米国の豪雪地域に住んでいたので,あの雪かきの苦労も身にしみていて雪には慣れているのですが,今回雪雷というのを初めて見ました.「鰤起こし」といってこの時期に富山湾の氷見鰤が捕れるのだとか聞いたことがありますが,あれがそうだったのでしょうか.関東で夏に発生する雷とは明らかに違うのは落雷の瞬間がとても明るいことです.日本海側で発生する雪雷は高度がとても低いからだそうです.
さて,今回は某所で統計的問題解決の触りをお話ししてきました.本書では統計的問題解決と名前をつけましたが,巷では使いにくい言葉です.漠然としていますし,先週お話ししたように,現状では統計という言葉の持つ意味についていろいろな捉え方があるからです.本書で呼ぶ統計的問題解決の実態は,実験計画によるデータから得た統計モデリングをベースとしたパラメータ設計にすぎません.本書ではワンワードで呼びたかったのでこのように命名しましたが,通常は統計的問題解決という言葉は使わずに単にパラメータ設計で済ませます.そうすると品質工学と何が違うのかと言う質問をときどき頂きます.
この質問に答えるとどうしても品質工学を否定するように捉えられてしまう恐れがあります.そこで,あまり具体的には踏み込まないで,最適化という山の頂上に登るのにそれぞれ別の登山口から異なった登山道を歩くようなものですとお答えすることにしています.基本的に好きなルートを採用すればいいのです.しかしながら,少なくとも私の知っている範囲では品質工学の登山道ではガイドを伴わない単独登頂での遭難事故が多発しています.
統計的問題解決と品質工学との違いは技術的にはいろいろとありますけれど,ここで少しだけドグマについてお話します.まず重要なこととして,品質工学は製品の源流に立ち戻るという基本思想からおわかりのようにメカニズムドリブンであるということです.これに対して統計的問題解決はデータドリブンです.品質工学が「かくあるべき」であるならば,統計的問題解決は「あるがまま」ということでしょうか.これらのドグマの違いはシステムの交互作用に対峙する姿勢の違いとなって表出します.即ち,品質工学では交互作用は潰すべき対象として邪魔者であるのに対し,統計的問題解決では交互作用は見出す対象であり,それはむしろ宝であると考えます.
更に,統計学を使うという姿勢にも違いがあります.品質工学は他の手法との比較が原則としてなされていないクローズな手法であるのに対し,統計的問題解決では最新の統計学の成果を積極的に利用します.例えば,決定的スクリーニング計画もそれが使える状況であればどんどん使うというオープンな手法です.オープンであるが故に事例ではケースバイケースの対応が可能で,これこれこういう場合にはこうしなければならないとは言えません.その点では品質工学のほうが初学者には入りやすいかもしれません.JMPのような多機能なソフトを必要としないのも品質工学の特徴ですが,わたしはこれはむしろデメリットと思っています.
このように統計的問題解決はオープンな手法ですから,より多くの技術者の皆さんと議論をし,手法の比較検討検討をして,より良い手法を開拓していく必要があります.今まで品質工学しかやったことがないという方にもせひ挑戦して頂きたいのです.そのための良い参考書が河村・高橋(2013)『統計モデルによるロバストパラメータ設計』,日科技連です.著者の一人の島根大学の河村先生は当時在籍なさっていた統計数理研究所のコラムで次のように書かれています.
品質工学会の会員の多くは、電気系・機械系・化学系などの実験系工学出身者であるため、統計学あるいは実験計画法をベースにデータ解析を行っている技術者は数少ない(日本の工学系の教育カリキュラムにSQC やタグチメソッドを導入している学科は極めて少ない)。そのため、学会発表では一方通行的なタグチメソッドを用いた成功事例が多く、他のデータ解析手法と比較検討した事例、失敗事例を別観点からの改善検討事例、またタグチメソッドの統計的観点による理論研究などの話題は少なく、これらは今後の課題となってくるであろう。(引用ここまで)
河村・高橋(2013)はこのために品質工学から統計モデリングによるロバストパラメータ設計(本書でいうロバスト最適化に限定した統計的問題解決)への橋渡しを意図して書かれています.この本の中では明示されていませんが,紹介されている事例の多くは品質工学の事例として有名なものでそれらをJMPを用いて最適していますが,実はJMP単独ではスクリプトを書くでもしないと困難なことがあって,アドインを用いています.HOPEアドインという名称で,『JMPではじめる統計的問題解決入門』でも言及しました.(因みに河村先生は別の書籍ではSRPDアドインという派生版を使っておられます.)近いうちにHOPEについてはこの場で紹介しますので,しばしお待ちください.

それではまた.
タグ:統計学
posted by Tad at 14:18| Comment(0) | TrackBack(0) | 統計的問題解決