2017年09月30日

p82の一番上の棒グラフを作成する方法について

p82の一番上の棒グラフを作成する方法について質問を受けました.話の展開からは重要なグラフではないということもあって,実は読者に対しての課題としてあえて手順を省いています.試された方はいらっしゃいますでしょうか.以下を見る前に少し考えてみてください.

回答
これだけが正解ではありませんが,ここにもっとも単純な手順を書いておきます.まず最初に「膜厚」で並べ替えて欠測値と除外行を除いて最大と最小からそれぞれ10行を選択して,行番号を右クリックでメニューを出してそれぞれに好みの色を設定します.このときCTRLキーを押しながら各行をクリックするのはおわかりですよね.行パネルで選択されている行が20になっていることを確認してください.脚注にも書きましたように,膜厚を色にドロップすると似たグラフが描けます.こちらの方がJMPらしいと言えますが,実はこのように行を選択しておくと別のメリットがあります.書籍に掲載されているパラレルプロットはこの選択された状態で作成していますが,選択された行のデータが強調されるので見やすいのです.念のために言っておきますと,同じパラレルプロットの作成は「装置NO.」と「欠陥数」以外の列を選択して「グラフビルダー」のXにドロップしてから,上のアイコンの一番右(パラレル)をクリックします.
 さて,ここからp82の一番上の棒グラフを作成するには,少々手順を踏まなければなりません.このような列方向に計算するにはエクセルを使いたくなりますが,ここは堪えてJMPだけでやります.そのためには色を設定したそれぞれの10行の行番号を選択してテーブル>サブセットでサブセットテーブルを作成します.次にそれぞれのサブセットに対して,列>列ビューアで設定パネルを出して装置No,膜厚,欠陥数以外を選択してから「要約の表示」で要約統計量の項目を出してからそこの赤三角から「データテーブルビュー」でテーブルに出力します.別の色の10行でも同様にしてから,その二つのテーブルをテーブル>結合です.このときそれぞれで列名称が入っている「列」を元の列から選び,「対応」で対応する列に設定します.普通にやると「無題の列」にN2,SiH4等のラベルが入るはずです.後はもうおわかりですよね.計算式で二つの平均の列を引き算した新たな列を作成してそれを棒グラフにすればよいのです.
ところでこのグラフですが,それぞれの因子範囲が異なっているので,これらの値を比較することにはデータ分析上はそれほど大きな意味はありません.JMPに慣れるための例題であって,パラレルプロットによる可視化の知見を数値情報にしてそれを再度視覚化する一つの手順を示したとお考えください.
タグ:JMP

2017年09月25日

質問についてのお答えと正誤表の更新など

本書を会社経費で購入して頂いた方からサポートファイルの扱いについて質問を受けました.
まず,紙の書籍は回し読みしても著作権を侵害しません.また,個人的利用に限っては断りなく複製することも可能です.その一方でソフトウェアであるMCDAアドインは一般的なソフトウェア利用規約に従って頂くことになります.MCDAアドインは本書1冊につき一本のライセンスが認められているダウンロードバンドルの形態となっています.SAS社との取り決めで,アドインは書籍購入者限定配布とし,その複製及び譲渡は不可になっているので,原則として(書籍と異なり)同じ部門内であっても使い回すことはできません.サポートファイルは一般的なソフトではありませんが,jslファイルやほとんどのファイルに付随しているスクリプトというソフト的な著作物を含むので関係者と協議した結果,アドインと同じ扱いにしました.以下にサポートファイルの利用規約を再掲します.

サポートファイルの利用規約(ダウンロードに際しての注意)

ファイルのダウンロードは本書購入者に限定させていただく取り決めとなっていますことをご了承ください.会社等で購入された場合でも,代表者1名のみがファイルをダウンロードできます.ダウンロードしたファイルは配布不可ですけれども,代表者のPCの画面をプロジェクターで映したり,(画面を)共有したりして複数人で一緒に議論しながら実習していただくことは可能です.

ここで「会社等で購入した場合は代表者1名のみ」ということの意味ですが,書籍1冊につき任意の読者1名(おそらく最初に読む人)と読み替えてください.著者とはいえ私の思うようにはできないことも多々あり,ご理解いただけましたら幸いです.

ついでで恐縮ですが,正誤表を下記に更新します.(1-3は既報分です.)
1.p11の下のエクセルデータで,左のデータの右側が50代になっていますが30代の間違いです.単純なタイプミスのチェクもれです.話の内容には大きな影響はありませんが,訂正します.
2.p85の2行目のJMPくんの台詞で,「表示形式」のところで「データ点はオフ」を選択するとデータ点が見えるよ...とあるのはもちろん「データ点が消えるよ」の間違いです.デフォルトではテータ点が見えるようになっているので,理解する上では大きな問題はないと思います.
3.対応済みなので削除.
4.p65のJMPくんの台詞で「降水量をY軸に,平均気温をX軸に...」ではXとYとが逆ですね.
5.p125の脚注のBinormalはBinomial(二項分布)のタイポです.
6.p140ページの統子ちゃんの台詞でRSMEとあるのはRMSE(Root-mean-square-error)のタイポです.

以上お詫び申し上げ,訂正させていただきます.

2017年09月23日

あての話

Amazonで万年筆のインクを物色していて,いつもは見ないことにしている「統計的問題解決入門」のページにふと目がいったところ「なか見!検索」が実装されたようですね.「はじめに」を含んだ最初の15ページだけですが,雰囲気だけでも伝わればありがたいです.とは言っても,ここだけ見るとJMPマニュアル本のように見えてしまうかもしれません.本書の第3講以降では徐々にJMPを問題解決に使うことに主題を移していくので,マニュアル本のつもりで購入された方は当てが外れるかもしれません.そうだとしたら申し訳ないです.
「当てが外れる」で思い出したので無駄話を一つ.本当はそろそろ本書の補足などを書いていこうとも考えたのですが,来月開催予定のJMPer’s Meetingでお話しすることと重複してもどうかと思い,このブログではしばらく雑記を書くことにしておきます.会場を広くして定員を増やせる可能性もあるとかで,上記のセミナーはまだ申し込み可能なようです.よろしければどうぞお越しください.
さて,当てが外れた話です.私は木工を趣味としています.赴任先の米国では男10人集めればそのうち3人は木工(Wood Working)をやっているというくらい普及していて,TVや雑誌でも盛んにWood Workingの情報を流していました.木工道具の専門店なども近所にあり,同僚のアメリカ人に勧められたこともあって一時はかなり凝りました.自宅に地下室があったので,テーブルソーやバンドソーなの大型機材を買い込み,本棚やテーブルなどを製作していました.家具作りともなると大きい板が必要なので,製材所に行ってWalnutなどの気に入った木材を見て回ります.その際に注目するのが木目の性質や変形具合です.特に反った木材は要注意です.日本では一般に反った木材をアテ材と言いますが,これは厳密には正しくありません.
陽疾と書いて「あて」と読む言葉があります.太陽に疾る(はしる)と言うことを意味していると推測しますが,何が疾るのかというとそれは樹木です.太陽を目指して樹木は成長します.特に山の斜面では南を目指して斜めに伸びていくことになります.こうした樹木は重力に対抗するために成長の過程で主幹が変形し,内部に応力が蓄積されます.樹木のこのような部分を陽疾と言うのです.単に反りが大きい木材をアテ材というのではありません.というのも,アテ材は(単に)反っている木材に比べて少々性質が異なっているからです.厳密には陽疾が原因で現在(あるいは今後それ以上に)反っている(いく)木材のみをアテ材といいます.
陽疾に蓄積された応力が製材の乾燥工程でリリースされると,その木材は反りやすいのです.一般住宅用の木材は炉に入れて人工乾燥(Kilin Dry)させることがほとんどですが,人工乾燥では乾燥の過程で樹種によっては木材にダメージが入りやすいので,いまだに天然乾燥(Air Dry)も実施されています.この状況では家を建てた後に,徐々にそれらの木材が反っていくという困ったことになります.
このため,昔は上棟してしばらく放置して,壁塗りをする前に補修可能する工程を設けていたそうです.スループットを犠牲にしてノイズ対策の工程を追加したといったところでしょうか.もう一つ,昔の大工の棟梁は家(と言っても大きな家でしょうけど)を普請する際にしていたというロバスト化があります.もう一つ,昔(と言っても相当昔でしょうけど)棟梁は自ら山に行って木を下見に行き,自然環境でどのように育っているかを観察し,どの木材をどこに使うかを決めていたと聞きます.樹木を伐採,製材する前に陽疾の具合を観察して,それぞれが乾燥していく過程で今後どのように反っていくのかを予測しておくわけです.腕のいい大工はその予測に基づいて(反りの具合いを見込んで)家を建てました.これがうまく予測通りになってくれると,家の(接合部の)強度が増していきます.なんとも素晴らしい匠の技ですが,たまにこの見込みと異なる反り方をしてしまう木材が出てきます.こういう状況をアテが外れるといったのです.
このような匠の技は現代では失われつつあります.反りの出にくい(陽疾のない)樹木を育てる工夫はもちろんですが,集成材などを使用することでそもそも反りのない木材を使ったり,ジョイントに金具を使うことで反りを強力に補正したりして,反りを予測するという必要がなくなってきているからです.私が大工だったらつまらない時代になったと嘆いているでしょう.予測するというのは人間にとって必須の能力であるとともに一種の麻薬のようなものです.アテが外れるということにはギャンブル(射幸心)とも密接な関係があるので,それは人間にとって必要悪であるのかもしれません.
統計的問題解決は統計モデルによる予測をベースにしていますが,それを面白いと感じるのはその予測が当たった(あるいは外れた)ということを目の当たりにできるからです.匠の技のようなKKDの技術を後世に残すことも統計的問題解決の一つの重要な役目ですが,予測という点で両者に接点があるようです.職人技をモデル化して後世に継承することには近いうちに挑戦してみたいと考えています.
今週も雑談ですいませんでしたが,それではまた.
posted by Tad at 13:00| Comment(0) | TrackBack(0) | 雑記