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2018年12月08日

おでんの話

今週は暖かい日が続いていましたが,この週末は寒いですね.こういう日はおでんなんか食べたくなります.実は,卓上の電磁料理器を最近購入したのですが,これがなかなかよく出来ているんです.この調理器には「味しみこみ」コースというがあって,メーカー(パナソニック)によれば「煮崩れを抑え,味がよくしみこんだ煮物ができる」とのことです.さっそくおでんで試してみたところ,確かに通常より短時間でも味が染み込んでいるようです.煮崩れしやすい大根などは長時間の煮込みは適さないのですが,これならば味の染み込み具合は十分です.おでんのタネによっても最適な調理方法が異なるのではないかと,最適化をしようと真剣に実験計画を検討していました.ですが,5時間足らずでこの状態に調理できるのであれば,全く不満はないのでその必要はありません.
未確認ですが,おそらくこの「味しみこみ」モードではパワーを抑えて温度を低めに制御しているのではと予想します.沸騰させずに加熱することで,煮崩れを低減するのでしょうけれど,このモードで味が早く染み込む訳ではないようにも思います.直感的には,出し汁に大根を漬け込んでグラグラ煮込んだ方が早く味が染み込むはずです.一方で,煮物は冷めるときに味が染み込むという話も聞いたことがありますし,真実はどうなのかを検索しているうちにブログ記事を書く時間を取られてしまいました.完全によそ様の情報だけでブログを書くのも躊躇われますが,本日はその報告でご容赦ください.
おでんということで最初に検索した紀文アカデミーには,火を止めてそのまま放置するおでんの作り方に対して下記が掲載されています.

意外に勘違いしている人が多いのですが、「冷めるときに味がしみ込みやすい」わけではありません。温度が高いほど味のしみ込みは速いので、火を止めてからのほうがゆっくりしみ込んでいきます。途中で火を止めているのは、煮くずれを防ぐためと考えられます。

回答されているお茶の水女子大学生活科学部食物栄養学科の佐藤先生は大学の研究者情報によれば「根菜類のテクスチャー及び味が同時に適度となる最適調理条件をシミュレーションの手法を用いて明らかとすることを目的としている。」そうです.勘と経験の賜物であった料理の世界にこそ最適設計が必要となるのですね.実験計画など実施されているのでしょうか.大変興味深いところです.
ネットには他にも,「煮物は冷ますと味がしみる」はただの勘違い? 分子調理学者が考える“最もおいしいおでんの作り方”などという記事もありました.こちらの石川先生は宮城大学の食品分子栄養学研究室で『料理と科学のおいしい出会い』という著書もあります.専門分野は分子食品学,分子調理学,分子栄養学とのことで,分子調理・分子料理ラボというサイトを運営されています.上記の記事で石川先生は次のようにとおっしゃっています.

「うま味、甘味の感じやすさが温度によって異なる一方、塩味はこのような変化が小さいことから、「(冷めた煮物は)より塩味をきつく感じるため」ではないか」

両先生のご意見では「味しみこみ」モードで味が(早く)染み込むことはないとのことです.そう感じるのは勘違いだそうですが,わたしの体感では確かにつみれなどは味が通常より早く染み込んでいるように感じたので,相入れません.ということで,更に調査を続行します.
その結果浮かび上がってきた別のメカニズムがありました.その研究はOLYMPOSが主宰するシゼコン(昭和35年から続いている小・中学生を対象とした自然科学観察や理科自由研究のコンクール)で参照できます.冷めるとき味がしみこむのはなぜか? という愛知県刈谷市立富士松中学校のお二人の研究です.大学の先生顔負けの素晴らしい研究だと感心しました.第46回入賞ということで今年が第58回でしたから,12年前の研究で彼らももう社会人になっているかもしれません.彼らの考察によれば,

食材は加熱時に軽くなるが、冷却時には重くなる。これは加熱時に食材の水分が抜け、冷却時に水分が戻るためで、このとき味の成分も食材の中に取り込まれ、味がしみこむ。

ということで,この仮説はわたしの体感とも合致します.このようなメカニズムは十分あり得るように思います.

食材を一定温度以上に加熱すると、味はしみこみやすい。

という考察を補足しますと,同じ煮物と言っても,大根のような根菜とつみれのような練りものでは大きな違いがあることに注意すべきです.植物である大根には細胞があるのでそのセルロースの壁を壊さないと味(煮汁)は浸透しにくいのです.このために皮を厚く剥いたり,一度高温で加熱したりする必要があり,「味しみこみ」モードでも事前に柔らかく煮ておくように説明書に書かれています.彼らの研究では,実験6と実験7でこの事実に迫っています.
ただ,食材が加熱中に軽くなるという観察結果だけでは,水分が抜けているということを証明できません.水分量を計測する必要があります.とはいえ,実際に澱粉の水分量を計測した論文があります.伊藤他,瀬木学園紀要 (4), 60-64, 2010,加熱条件の違いによる各種澱粉の水分量と吸湿性の変化によれば,少なくとも練りものでは確かに冷却過程での味の染み込みが期待できるのではないでしょうか.

暇ネタですいません.本日はこれにて.
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2018年12月01日

大掃除と最適化

今日から12月ですね.12月と言えば師走.師走と言えば大掃除を想起するのが日本人です.新年早々を塵一つなく迎えたいという願いの顕れでしょうか.何かと忙しい年末にわざわざ大掃除しなくとも,新入学・入社を期に引っ越しする際に不要なものを捨てたりすることが多いでしょうから,大掃除をするならば3月のほうが合理的のような気もします.米国ではスプリングクリーニングといって大掃除は春と決まっていました.これは冬の間の暖房(石炭ストーブや暖炉など)の汚れをシーズン終了を機に家中を掃除したことの名残です.大掃除とまではいかないけれど,今でも春先になると机の上の整理・整頓をしたくなります.
 
という枕を置いて,以下強引に問題解決に繋げてみます.
 
『オトナ女子の整理術』新星出版社編集部 (編)という本を何気なく読んでいたのですが,気になったことが書かれていました.この本そのものは新社会人になる若い女性向けのマナー本とでもいいましょうか,30分もあれば読めてしまう本ですが,その中に「整理と整頓の違い,わかりますか?」というコラムがあって次のように書かれています.
 
整理は「いらないものを処分すること」,整頓は「必要なものを分類&片付けて整えやすくする」こと

この定義には少し異議があります.私の考えでは,整理は見栄えを良くすることを第一義とし,整然と揃えるための行為です.真っ直ぐに並べたり角を揃えたりといった見た目だけでなく,分類や分別もこの範疇に入ります.「整理」の理は道理の理であって曲がらず真直ぐという意味です.エントロピーを下げると言い換えてもいいかもしれません.一方,整頓は素早く作業できるということが第一義で,例えば,ものを所定の場所に戻したりする行為です.ですから,分別するのは「整理」ですが,それを廃棄するのは厳密にあは「整頓」です.ゴミ箱の中が所定の場所というわけです.整頓の頓の字に注目してみて下さい.仏教で修行の過程を経ずに直ちに悟りにはいることを頓証菩提と言いいますが,頓は直ちにと言う意味です.薬の頓服なども症状が出たら直ちに飲む薬のことです.頓服薬でない場合は,食後とか食間とか症状に関係なく飲む薬として内服薬を出されますが,こちらは口から導入するという意味なので,対にするならば外用薬でしょうか.閑話休題.
 
この本ではいろいろなケースについて整理か整頓かの例を示して,読者の理解を促していますが,書いた人が混乱しているようで,これを読むとむしろ混乱します.例えば,この本で「整理」の例としてあげているのは以下の行為です.
1.書類をいるものといらないものに分ける
2.机の上にあるものをとりあえずダンボール箱に移す
3.必要のない名刺を捨てる
4.終わった仕事の資料で,残しておくものと捨てるものを分ける
5.外出後にかばんの中を整理し,いらないものを捨てる

分別する行為,言い換えればエントロピーを低減するのが「整理」という私の定義に照らして上記の例を判定してみると,1と4は確かに「整理」です.ですが,3は必要性によって分類する行為は「整理」ですが,不要な名刺を保管せずに捨てる行為は「整頓」です.因みに,5は本当にこう書いてありました.整理するならば「整理」だろうと思うかも知れませんが,これは「整頓」です.不要なもの満載でも整理されている鞄はあり得ます.2では,机の上が綺麗にみえるならば「整理」とも言えますが,移動しただけで分類されていないのですから,「整理」とはいえません.部屋の片づけをする際に,とにかく一切を箱に詰め込むという人がいまして,彼曰く「何か探し物があれば必ずその箱に入っているから早く探せる」と豪語していましたが,ある意味でこれも「整頓」かもしれません.

一方「整頓」の例としては次の例があげられています. 
6.ファイルのサイズを合わせて並べる
7.メモをテーマごとにA4の紙に貼る
8.終わった案件の書類を処分する
9.机の引き出しに仕切りを入れて,文具を取り出しやすいようにしまう
10.帰る前に机の上をざっと片付ける
11.本棚の本を分類ごとに並べる
12.パソコンのファイルをテーマごとに分類する
13.使った資料を棚に戻す
分別して「整理」した後に,それを所定の位置に置く行為が「整頓」,言い換えればアクセス速度を向上させるのが「整頓」という私の定義に照らせば,これらの例は確かに「整頓」ですが,大きさで分類する行為などは「整理」でもあります.大きさの順に並べることの目的が見栄えなのであればそれは「整理」ですし,必要なファイルを探しやすくするのであればそれは「整頓」です.また,仕切りを入れるということの効果はものに所定の位置を与えるということで「整頓」で間違いありませんが,仕切りの効果は見栄えを良くする「整理」にもなっています.本を分類する作業は「整理」ですが,分類ごとに並べると大きさや色で揃わないことになるので見栄えはよくなリませんので,探しやすくなるという点からは「整頓」で正解です. 

「整理」と「整頓」はともにシステムの状態を変化させる行為と考えることができます.この場合,「整理度」と「整頓度」という数値特性でシステムを記述して,これらでシステムを多目的最適化することも可能です.この場合,例えば,机の上の状態(モノの位置)を最適化するとして,どのようなデータを取ればよいでしょうか.「整理度」であれば画像処理でモノの並びの直交度等を計算して数値化したり,「整頓度」のほうは人の位置からのものの重心位置までの距離の積算値,あるいは何らかの作業を仮定した距離指標を画像計測してもいいでしょう.でも,両者の定義は上述のように人によって曖昧ですし,仮にわたしの定義によったとしても数値化には主観が入ってきています.しかも,おおよそのところ両者は相関があるといえるので,そもそもこの二つを独立した特性と看破することが困難です.最高に整理された状態が作業効率が最大とは限らず,逆もまたしかりなので,多目的最適化が必須であることは間違いありませが,主観的特性では最適化の数値目標が不明確なので,どの状態が最適なのか決めるのが困難です.

こういう正体が良くわからない主観的特性を最適化するときの戦略の一つとして,フルモデル(二次までの交互作用と二次項をすべて)でカスタム計画を作ることがあります.異論はあると思いますが,わたしはこの場合の最適化基準はI最適でいいと考えています.その上でまずは実験し,そのサンプル(今の例では画像)から可能な限り数値を引き出すことを試みます.要するに実験が先で特性は後から考えるという方針です.最初から計測手法を限定せずに,あらゆる特性の候補を立てます.もちろん,実験単位が製品であるような場合に限ります.机の状態であれば画像を残しておいて,後からありとあらゆる画像計測を実施することになります.これら特性の候補についてモデリング,最適設計を繰り返して,意味のある結果が現れるかを考察しますと,思いがけないトレードオフが現れたりすることがあります.フルモデルは実験数が多くなるのが難点ですが,(少なくとも二次までの)交絡はありませんし,何が特性となるかわからないという状況ではとても有効です.

この人は考えるより先に手を出すのが好きだなと思ったときにはフルモデルの戦略をお勧めしています.一方で,考えることが好きで慎重なタイプの人には主効果のみで計画を立てたり,決定的スクリーニングを先行する戦略を指導しています.ですから,良いコンサルテーションにはまずその技術者のタイプを見抜くことが大切です.

いささか強引で落ちはつけられませんでしたが,今週はこれにて.
タグ:問題解決
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2018年11月24日

統計とチンパンジー

今年のDiscovery Summitでは産業分野からの発表が増えました.産業分野からのコミッティ委員メンバーとして,ありがたいことです.企業に所属している技術者が社外発表するのは,会社によってはハードルが高くてなかなか困難なご時世ですが,それを乗り越えてでも価値があると考えています.

これはわたし自身の体験ですが,発表を意識することで考察のレベルがぐっと高まります.発表前になって粗を見つけてしまい大慌てで対策を考えたり,あるいは発表のストーリーを軌道修正したりということは度々あります.そこに価値があります.技術者としてもそのことには気づいているので,発表はしたいんだけど,という方がたくさんいらっしゃいます.Summitでもある企業の術者の方とお話ししたのですが,発表を検討していたんだけれど上司に「まだそのフェーズでない」と言われたとか.t分布の発見で有名なゴセットが,所属していたギネスビール社に隠れてStudentというペンネームで論文を発表したことはよく知られています.当時も「まだそのフェーズでない」と言われて彼が引き下がっていたら,確実に統計学の進歩は遅れていたことでしょう.とはいっても,Summitは学会ではないのでデータは作っても構わない(その旨は明示すべきですが)と考えていますし,技術背景も代替モチーフで説明しても何ら問題ありません.わたしが一昨年の発表で使ったメッキの事例は「ある半導体プロセス」の代替モチーフです.

Summitの場合,もう人つ発表者に恩恵があります.発表者には参加費無料(ポスターは半額割り引き)の特典があるのはご存知だと思いますが,実は前夜にプレナイト・ディナーが開催され,そこにも招待されるのはご存知でしたか.その場には米国からSAS社の幹部も参加していますので,いろいろとJMPについてに深い話も聞けます.わたしも今回,あるスクリプトの一般公開の可否についてスクリプトを書いた本人(テクニカルセッションに登壇したBrady Bradyさん)に直接尋ねることができました.因みに,現時点では公開されていないが,公開する方向で検討するというお答えでした.

プレナイト・ディナーにはコミッティメンバー全員に簡単なスピーチをせよとの依頼を頂いたので,以下のようなお話をしました.日本人が多数の場であり,米国SAS社の幹部には通訳がついているので,日本語でお話しすることも考えましたが,韓国からの参加者が3名ほどいらっしゃるので,英語でやってみました.久しぶりに英語を話すので,皆様に通じるかが不安でしたが,後で韓国からの参加者にお世辞でしょうが「Good presentation」と言っていただけたので言いたいことは理解していただけたようです.以下は覚えている限りの要旨を補足,修正しています.

スピーチここから
昨年,幸運にもJMP14についての early adopter version を試す機会に恵まれましたことに感謝しています.小さなバグを見つけたのでそれを報告し,製品版で修正されました.JMPのMac版に貢献できて幸せです.そのとき,JMP wish listにささやかな要望も投稿しました.未だに誰からも反応ありませんが,今でもMacbookのTouch Bar にtool メニューが欲しいと思っています.
これはJMPユーザーとしての要望ですけれども,現在は単なるユーザーとしてよりも,JMPのadvocatorあるいはエバンジェリストのような役目で立ち回る機会が多くなってきました.ことあるごとに,周囲にJMPを使ったDOEや統計分析の重要性を訴えていますが,多くの人からの反応はまだ薄いのが現状です.なぜあの人たちには,世の中の常識が理解できないのかについていろいろと考えるに,思い当たることがありました.
道具を使うチンパンジーのことをご存知かもしれません.いくつかのチンパンジーのグループは平たい石の上に種を載せ,ハンマーのような別の石でそれ潰して中身を食べます.野外観察によると,婚姻のため道具を使わないグループから道具を使うグループへ移動したメスのチンパンジーは生涯にわたって道具を使うことを覚えられないそうです.彼女の子供は道具を使うことを覚えるので,遺伝ではありません.京都大学の研究者によれば,チンパンジーは幼少期のある一定の時期に道具を使うことを学習しないと一生道具を使えないのだそうです.
この話を思い出して腑に落ちました.世の中の常識が理解できない人々は新人のときに統計ツールを使う機会がなかったので,もはや統計あるいはJMPを使うことができないのです.そこで私は戦略を変えました.理解できない人々を説得して時間を無駄にするよりも若い技術者を指導していくことが肝要です.明日のジャパンセミコンダクターの坂本さんの発表はその成果の1つです.皆様が明日の彼の発表にきてくださることを望んでいます.
スピーチここまで

因みにDOEの重要性や統計ツールの有効性が理解できない人々をチンパンジーと言っているわけではないですよ.この意味ではわたしたちも同じチンパンジーには違いなく,ただわたしたちのグループは道具を使うことができるというだけの違いです.現時点では道具を使うグループも使えないグループも共存しているわけですが,今後の環境の変化などで生き残っていくのは道具を使うグループであることは間違いなく,これはチンパンジーに限ったことではありません.
それではまた.
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2018年11月17日

事例検討会のご案内とMac版の最新情報など

Discovery Summit Japan 2118に参加された皆様,お疲れ様でした.わたしも前日の朝から高橋先生による「紙ヘリコプターを用いた実践型計画法入門」のお手伝いをしたりして,何かと動き回っていたので今になってどっと疲れが出ております.というわけで本日は短めに.
上述の高橋先生のセミナーは丸1日のセミナーなので,遠方からSummitに参加するために前泊される方も多いとのことで,Summitの前日に開催するという企画で昨年から始まりました.来年も開催すると思いますので,「実験計画って何の役に立つの?」と疑問に思われる方は是非受講してみてください.32,400円(税込)の有償セミナーでしたが,Summitの参加者には特別価格21,600円(税込)が適用されましたので,おそらく次回も同様な割引があると思います.講師の高橋武則先生(現在は慶應義塾大学)は今年もパワー全開のご発表をしていただきました.まだ今年のご発表については資料がアップされていませんが,昨年のご発表の資料がこちらにあります.このセミナーではブログでも度々言及しているHOPEアドインを使いますので,実験計画だけでなくHOPEアドインの基本的な使い方も学ぶことができます.受講後半年間という有効期限付きではありますが,個人で使うことができるHOPEアドインが入手できます.
セミナーの場で,HOPEアドインを継続して使いたいというご質問をいただくのですが,最も簡単なのは,隔月開催(今年は偶数月)のHOPE事例検討会という実験計画をもとにした事例相談会に参加していただくことです.参加費は無料ですが,自らの事例を持ち込みことが参加条件になっています.企業の技術者にとってはデータの社外開示はハードルが高いかもしれませんが,変数名や水準,更にはデータそのものを変えてしまっても全く問題ありません.必要最低限の技術背景の説明はしていただいた方がより適切な助言はできると思いますが,それさえも差し支えあれば伏せるか別のモチーフに変えるなどの工夫をしていただければ,ハードルを下げることができるはずです.上述のセミナーを受講しなくとも,検討会に参加することは可能です.わたしも検討会のオブザーバーとして出席していますので,ご興味あれば実施予定日等の検討会についての詳細をブログのコメントでお問い合わせください.
本日はここまでと思いましたが,短すぎるのでSummitで入手したMac版についての最新情報を一つ.わたしは以前よりJMPがMacBook ProのTouch Barに対応していれば便利だと考えています.ご存じない方のために補足しますと,Touch BarはMacBook Proの一部のモデルに搭載されているファンクションキーに代わる60×2170という細長い形状のディスプレイです.面積としては小さいですが,高精細なRetinaなので写真も表示できソフトによっては非常に有効です.個人的にはここにJMPのツールメニューがあれば便利だなと思っているのです.とはいえ,このTouch BarはMac本体とは別のOS(Apple WatchのOSのようです)で動作するので,ソフトメーカー側で作りこまなければなりません.Summitには毎回JMPのセールスとマーケティングのボスのJon Weiszさんが来ていて,彼はMacユーザーでもありますからこの機会に直訴してみました.そうしたら「私も欲しい」とのこと,プロダクトマネージャーのDaniel Valenteさんもその場にいたのですが,彼もまたMacユーザーで同意見でした.(今回の二人の掛け合いの講演は面白かったですね.)聞くところによると御大John Sallさんも最近Touch Bar付きのMacBookを買ったということで,おそらく彼がToch Bar対応を命じるのではないかともいっていました.
とはいえ,実現はしばらく先になる見込みです.なぜかというと最新のMac OSであるMojaveに搭載された「ダークモード」という暗い色調の表示スタイルが,JMPで問題となることが判明したからです.(そう聞いたのですが,自分もMajaveにしてJMP13を起動して見ましたが,特に問題は見あたらないですね.何か特別な操作や環境下での問題かもしれません.11/18追記:もしかしたらダークモードに対応したJMPの開発中に問題が見つかったということだったのかもしれません.以前からエディター系のソフトでダークモードをサポートしたものはありましたが,JMPの場合はグラフやデータの表示が見にくくなってしまうので,あまり現実的ではないような気もします.)ダークモードにしなければ問題ないので,普通のソフトメーカーであれば対応は後回しにされるところですが,John Sallさんが「fix it!」と命じたそうで,そうなるとそれがJMP開発の最優先になるのです.というわけで,今現在SASの開発陣がその対処に追われているとのことです.おそらくダークモードは12月リリースの14.2で対応されると予測します.ですので,Touch Bar対応は作業量の多さもあるので,遅ければJMP15になってしまうかもしれませんが,対応はしたい,とSAS USのトップが入っているので,Mac使いのJMPerの我々は心待ちにしていましょう.
Summitについてのいろいろについてはまた来週ということで本日はここまで.それではまた.
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2018年11月10日

ロバスト設計とMCDAアドイン

前々回の記事で,プロファイルの「誤差因子」に何らかの因子を割り当てると,等高線プロファイルに尾根線が描画されるというtipsを紹介しました.こうすることで,割り当てた因子の微分係数が特性に加わり,それにゼロ望目の制約を加えることで,その因子をノイズ因子としたロバスト設計が可能となります.本書にダウンロード添付したMCDAアドインはロバスト(パラメータ)設計のためのアドインですが,プロファイルでロバスト設計ができるのに,なぜ,このようなアドインが必要なのかという質問をいただきましたので,今週はそれにお答えします.
短い答えを言うならば,何をしてロバスト最適とするのかという定義が違うというのが一つの理由です.少し丁寧に説明すると,プロファイルにおいて,満足度の最大化で得られるのは誤差因子に対する応答関数の微分係数を0にする解です.例えば,次のような応答関数を考えてみると状況が良くわかります.因みにこの応答関数はサポートファイルの「ロバストデモ.jmp」から作ったものなので皆様もお試しください.ご覧のようにこの応答関数は二山あって,∂X=0の制約を課して満足度を最大化したのが次の図です.
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∂X=0の点は3つあるわけですが,ここでは特性値に最大化の制約をかけているので,左側の山の頂点が解として導出されます.因みに,最大化の制約を外しても,その上でトリップの数などの「最大化のオプション」を増やしても(デフォルトでは20ですが,例えばそれを100とする)安定して左側の山が解となります.JMPの満足度最大化の癖のようなものでしょう.他のオプションを変更して試行錯誤すれば,左側の山の頂点以外が出てくるかもしれません.もちろん,特性を最小化にすれば真ん中の谷がこのように検出されます.
94_2.png
しかしながら,一般的な工業分野でより重要なのは右側の山の頂点(付近)です.特性値の変動という点では右側の頂点にある方がより大きなXの変化を受け止めやすいからです.この解は,微分係数に制約をかけることだけでは得られません.このためには,ロバスト化の指標を(特性の変動の)範囲(Range)においた最適化が有効です.但し,この場合でも状況によっては右側の山の頂点は出てきません.
下に示した解は,Xの変動を5%とした場合に導出したロバスト解の例です.(このような単純な例ではMCDAアドインは適用が難しいので,この例ではHOPEアドインを用いています.)ここに示したように,特性の制約次第で色々なロバスト解を暴くことができます.
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この暴くというフィーリングが特に工業分野での最適化では大事です.最適解は1つではなく,それは周囲の状況(社会情勢,時代)やステークホルダーにより刻一刻と変わって行くからです.ですから最適解そのものよりもシステムが内包している最適解の可能性を暴くことにより深い「意味」があるのです.その「意味」をシステムのオブジェクトと捉えれば最適解の候補がインスタンスということになります.
何よりも多目的最適化においては可能な限りロバスト化の制約は緩めておいたほうが都合が良いのです.ユーザーはロバストだからという理由で製品を購入はしないからです.一般的に,微分係数を0とするのはかなり強い制約です.この制約に引き摺られて特性の真の最適解を見逃す危険があります.ロバスト化の制約を緩くして,ばらつきは所望の範囲に入ればOKというケースがより好ましい場合がほとんどです.もちろん,微分係数に範囲の制約をかけることでも構いませんが,想像するのも困難なので通常は数値指定はできません.
このような範囲によるロバスト化を実現するのが本書に付属したMCDAアドインやHOPEアドインなのです.両者の違いについては以前お話ししたかもしれませんが,重要なことなので回を改めて説明したいと思います.因みに,来週のDiscovery Summit Japan 2018に参加される方は,そこでMCDAアドインの応用例の発表がありますので,ぜひお聞きになってください.
それではまた.
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